鎌池和馬氏の文章は、地の文にツッコミ所が多くて、ある種アクが強い感があるのですが、それは今巻でも健在。というか、作者的なツッコミが入るあたりは小説としてはどうかと思います。む、しかし、この巻のノリ的にはOKな気もするぞ?
3巻で見事なまでにぶちのめされてくれた一方通行さん、今回はちょっとだけいい人風味。やはり主人公に殴られた勢いで、どっかスイッチが入ってしまったのか。
短編集ということで、章ごとに主人公が交代し、1冊を通じての根幹となるテーマが感じられず、物語が発散しているように見受けられます。一方通行を中心に物語が回っているようでいて、周辺でドタバタが起きているので、それぞれのエピソードを掘り下げ切れていない感じです。もったいない。
それでも、主人公である当麻の、諦観や絶望を殴り倒してくれるようなハチャメチャな言動は健在。終盤の魔術師との会話も、非常にらしくて好感度高し。幻想殺しはあらゆる不条理を叩いて潰してくれます。カタルシスはなくとも、凝り固まった思考しかできなかった悲しい魔術師の未来を救ったという事実は、気持ちの良いものでした。
そして、一方通行もこの巻を通じて、少しだけ変わっていったように思えます。ミサカの妹達との繋がりを持ったことで、彼は弱さと、これまで傷つけることしかできなかった自身の力を、誰かを守ることに使えるという強さを得るのでしょう。それが、以降の物語に新たな楽しみを添えてくれるのなら、なんとも気持ちが良いではないですか。
しかし、御坂美琴スルーは、作者公認ですか。せっかくフラグ立ちそうだったのになぁ(笑)
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