事実上の最終巻。残りのエピソードは、おそらくは終わりを描くため? 裕一と里香の、当たり前な日常は、薄氷を踏むような危ういバランスの上に成り立つものであり、これまで裕一はそれに気付いてるつもりで気付いていなかったのでしょう。夏目の手により連れられた先で出逢った老夫婦の生き方は、恐らくはこれから歩むであろう未来の、最も幸福な形の一つ。日常を守るために犠牲にしなければいけないもの、耐えなければいけないもの、それを真に理解し、乗り越えていけるかどうかというのはこれからも問題であり、幼すぎる二人に容易に出せる答えでもないでしょう。
あぁ、それでもエピローグの不器用なキスも、精一杯考えた告白も、約束を誓う言葉も、それ自体が奇跡のような巡り合わせと幸運の果てに実った思いであるならばこそ、この上なく尊い一瞬であり、失われることのない記憶の一つとなるのでしょう。
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