レジンキャストミルク〈4〉

2013年4月18日

レジンキャストミルク〈4〉読了。

反撃のお話。各キャラに見せ場を持たせてるあたり、これまでで一番の盛り上がりかもしれません。傍観者的に物語に関わろうとしなかった『目覚まし時計』殊子の活躍とか、佐伯ネア先生の壊れっぷり+暴走っぷりとか、里緒の不器用な晶への信頼の表現とか、蜜の壊れる前の人形時代と、人間になる過程で壊れていった世界の有様とか、晶と硝子の不可分な在り方とか。

適度にユルいシーンが入ったりして、ひたすら重いわけではなく、そして圧倒的に反撃に転じている勢いがあるせいか、これまでのような暗さとは一転して、ヒーローものの正道的な逆転の展開がなかなかグッド。素直に熱く、燃える展開だったといえるでしょう。

今回、無限回廊が用意した『障害』としての上野少年や教師・別保はかませ犬程度の役割しか与えられてなかったようで。まぁ、上野少年の反転後の外道っぷりやら小物っぷりやらは、それはもう見事なものでした。人形フェチが人形にこの上ない恐怖を感じるという無意識下の刷り込みを与えた、殊子の黒すぎるユーモアは苦笑。死を与えるよりは、彼のこれまでの嗜好を全否定し、それでも生かしてやるという、彼女なりの復讐ですか。不器用ながらも、なんだかんだで妹思いの良い姉です。

そんなこんなで、主人公の晶と硝子のコンビを食ってしまうくらいに、今回は蜜が見せ場満載で非常に魅力的に描かれていました。彼女の悲劇的な過去も、壊れてしまった現在も、けれど君子という彼女によって唯一ともいえる友人がいたからこそ、何もかもを捨ててしまうという選択に至らなかったのだということ。友人から忘れられてしまう、一方通行の友愛だとしても、彼女の幸せを願う蜜の本質に一片の翳りも生じていないこと。自分よりも他人のために、自らの命すら無価値のごとく振る舞う蜜の行為は、ひどく不器用で、過剰な愛情表現であると気づかされるエピソードでした。

エピローグ。結局形だけは元通りの日常が戻ってきます。硝子の友人たちは気づかぬままに何かを失っているし、つぎはぎだらけの危ういそれは、また容易に崩れ去るかりそめのものなのかも知れません。が、その日常を取り戻す過程で、硝子が、蜜が得たものは、いずれその日常に還元されていくのではないかと思います。

というか、これまでのエピソードを見てきて、まさかこんな(表向きだけだとしても)ハッピーエンドを迎えることができるとは思いませんで。ある意味、ここで一区切りということなのでしょうか。