タザリア王国物語 影の皇子

2006年10月28日

影の皇子読了。

皇女・リネアの常軌を逸したツン具合が話題の本作。それはそれとして、非常に骨太の戦記ファンタジーですね。和洋の違いはあるけど、設定の重厚さとかシリアスさとか、十二国紀を彷彿とさせられます。

ひょんなことから、皇子の影武者として育てられることになったジグリットの波瀾万丈の半生がこれからじっくりと描かれていくのかな。敵一辺倒というわけでもなく、ちゃんと彼を理解し、味方してくれる人もいますが、そういった人物はリネアに目を付けられて、順に退場させられていくあたりが非常に怖い。敵は外部だけでなく文字通り身内にもいた! 本巻の最後で、それこそ一生隠し通すしかないような秘密を、リネアに悟られながら、それに気づかぬジグリットは、彼女からの歪みきった感情のぶつかりをどうやって切り抜けていくのやら。

正直、愛情の裏返しというのはあまりに苛烈なリネアの所行ですが、彼の母親の人格や、弟であるジューヌの人格形成を見る限り、国王クレイトスは王としては有能だったとしても、父親としてはあまりに我が子を顧みない失格者であるようにも見えるなぁ。や、作中の描写を見る限り、非常に人格者なのだけれど、ジューヌへの応対や、父子の感情をすっぱりと割り切って、彼を戦地へ赴かせるあたり暗に臆病な息子を疎んじていた節がなきにしもと思えてしまいます。ジグリットの登場が微妙なバランスを崩してしまったのはまさに悲劇。

故郷を焼かれ、その中で残されたナターシの妄執の行方も気になるし、すでに4巻まで書き進めているこの物語、かなりの大作になりそうな予感がひしひしです。途中で力尽きて頓挫しないことを願うばかり。