マテリアルゴースト〈4〉

2013年4月18日

マテリアルゴースト 4 (4)読了。

おお、なんかかなり面白かった。事件が起きない日常の、微妙な歪みから崩壊を、主人公の内面の適度な描写を通して描いてます。ヒロイン視点の場面転換は一人称タイプではどうにも視点が飛ぶ感じがして苦手なのですが、構成的には場面転換として使われているので、アイキャッチ的な挿話として捉えられます。むしろ、次回予告的?

前巻の結末で、前向きに生きようとした蛍の、今度は生きようと思ったときに感じる様々な生きづらさに苦しむ内面の吐露は青臭いなと思いつつも、そう感じられるようになった彼の変化の方が好ましく思えたり。そして、訪れたはずの「日常」に投げ込まれた小さな違和から生じる不協和音は、これまでのような直接的な危機ではない、暗喩に近い終焉を予感させられると思ったら、ラストがとんでもないし。

せっかくユウと想いを交わしたというのにこの仕打ち。本当に鬱な展開が好きですね! だが、それがいい。

ラスト2頁のテキストは、淡々と客観的に語られるからこそ伝わる痛みがあるという。遺された側の表現がないだけに、想像で補完するとなおのこと痛苦を感じるこの生殺し感。よりによって次巻が短編集で、最終巻はその後というのがなんともずるい。ただ刊行の方法としては、構成的にも正しいと思うので仕方ないけれど、いっそのこと0巻と最終巻を同時に出してくれれば良かったのになぁ……。

しかし、記号化されたキャラががんがん出てくるかと思ったら、何気にメタな展開を好んでやってるあたり、侮れないシリーズになってしまったなぁ。1巻はかなり微妙だったんだけど(^^;

毎度仕込まれてる叙述トリック、作者ブログ見ると分かりづらいという意見があったようですが、アレって実は(ネタバレにつきコメントアウト)なんだろうなぁ。

蛍が世界の敵だとすれば、今回登場したヘルメスの役割っていったい何なのか? 蛍の存在を隠れ蓑にして、世界の目を欺いているとか? このどうしようもない最悪からどのようにオチを付けるのか、さてさて、面白くなってきましたよ。