古頃怪造高等学校文化祭を舞台にした、虚界の大公「悲哀」と「憤怒」の代理戦争。そしてその裏で進行するヴェクサシオンの目論見。
ラストが結構衝撃的な引きで、現界、虚界の各勢力が入り乱れ、その中心に在る伊依と魔王を巡って、争乱が巻き起こりそう。たいてい文化祭ってイベントが、この手の物語だと平穏と動乱の境目だったりするので、次巻以降はいろいろと大騒ぎになるんじゃないかと……。
伊依が目指す共存への道が、これまでは理想論で夢のままだったのに対し、今回の文化祭における鬼京や罠奈との交流を経て、ようやく具体的な実体のある方法論として先が見えてきた感じ。終盤の鬼京との議論については、結論ですらまだまだ青い感じがするけれど、彼女のひたむきさと、さらに先を見据えられるようになった信念と、彼女を支えようとする友人たちの存在が、その実現可能性を決して低くないものだと感じさせてくれます。その道程に立ちはだかる障壁は、どれもこれもが高く頑強で、そのたびにぶつかり弾かれそうだけれど、回り道せず真っ直ぐに歩き通す、そんな強さこそが伊依の真骨頂。
エピローグで語られた寂憐院孤独と、その娘とヴェクサシオンとの関係。総長が身命を賭して滅しようとする存在。伊依の周囲のきな臭さはどんどん強くなるけれど、このシリーズのポジティブな展開を見る限り、この先も安心して明るい結末を期待できるのではないかと予想です。
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