108年目の初恋。

2013年4月18日

108年目の初恋。読了。

付喪神となった旧い校舎と少年の初恋の物語。と書くとなんか色物っぽいけれど、かなりしっかりと、こっ恥ずかしい青い恋物語でした。

ヒロインが旧校舎で、人間ですらないのに、さすがに100年も人間見続けてくれば、人間以上に人間味あふれていて、けれど老獪さはなくて、初心な女の子のままで少年に恋してしまって。

序盤の展開が、その辺の主題とは関係なく主人公・新と金髪先輩で魔術師なリアンのドタバタだったり、幼なじみの夕子嬢の片思いのお話だったり、微妙に脇道に逸れたりしつつも、その過程で新が恋についての自覚を少しずつ芽生えさせていく過程は丁寧。誰も彼も恋愛に免疫がないものだから、手も繋げないような臆病で、言い出せない気持ちばかり。そりゃハタから見ていれば応援したくなるし、やきもきしますわな。

物語としては、結局は結ばれるまでの紆余曲折であり、本来ならあり得ない、人間と付喪神というふたりの関係のその先の不安についてはかなり投げっぱなしな気もするのですが、それはすでに「初恋」じゃないからなぁ。いろいろな人間関係を見続けてきた旧校舎からすれば、それは予測して、予感しうる事態のはずなのに、少しも気にかける描写がなかったのが少しばかり不満かな。

それでも、終盤の展開は綺麗だし、エピローグでしっかりとハッピーエンドに仕上げてくれているので、初々しい恋物語としては手堅く仕上がった作品でしたね。それに、同年代の子どもたちのほうが、こういう作品は共感しやすいんだろうなぁ。さすがにスれてしまうと恥ずかしさが先に立ってしまって(笑)