前巻と同様、塔の階ごとに異なるさまざまな「幸せ」の定義に支配される世界。悲劇的な結末を迎える別れもあれば、運命的な出会いもあり。主人公・サドリと住人たちの出会いと交流の果てに残されたものの多くは悲しみであったりするのかもしれないけれど、希望の芽を残すことができたこともあったりと、様々。前巻に比べると、切ない展開には耐性が付いたのか強烈なエピソードはなくとも、パートナーとなるカエルとサドリの出会いを描いたエピソード「一二四四階の競争」は珠玉。一人と一匹の奇妙な信頼関係は、その実かなり根深い部分でしっかりと築かれていると感じられた短編。これを読むと、カエルの辛辣な発言もなんだか多少愛嬌が出てきたり。前巻を再読するのも良いかも。
しかし、まだ続くと思って読んでいたら、割とあっさり目的地に達したような感じでやや肩すかし。この部分はもう少し盛り上げて欲しかったかも。
そもそも塔の存在の意味や、外界の状況、塔を出たサドリらの今後など、描き切られていない部分もまだあるので、出来ればその辺も明らかにしてほしいですね。
そして、表紙が壮大なネタバレだったと最後に気付く。いや、この表紙はスゴい好きなんだけど。
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