シリーズ完結! 収録の短編も良い感じ
なんともらしい完結編。前巻の引きで不気味な雰囲気を漂わせていた囚人四十二番の正体は変態さんでした。というか、トレイズに焦がれすぎて頭のネジ吹っ飛んでるのはどうかと。最後の決戦のシーンのハズなのに、いまいち緊迫感が……。人質になってしまったリリアを救出すべく一人追撃するまでのシーンは格好いいのに、やはり彼はヘタれの汚名を払拭することは完全にできなかったのか。エピローグでのリリアとの再会などは、お約束ではありますがにやけさせられますな。その後のぐーぱんちも多めに見てやりましょう。アリソンとヴィルと違って、このふたりはまだまだ一緒の道を歩いていけそうだし。
脇役勢も良い感じに話を盛り上げましたね。マティルダさんを初め、トラヴァス少佐の部下の面々の活躍が光る。特にトラヴァス少佐に因縁のあるアンの、過去の吹っ切り方とかは、彼女の信念や家族への想いが感じられてそれだけで名シーンに。マティルダさんの毅然とした態度も人の上に立つものの使命と覚悟に充ち満ちて格好いい。どこぞの気の抜けた王族夫婦も、先の事件ではしっかりと見せ場を持ってきたし、アリソンやトラヴァス少佐に至っては本編の主人公らを食わんばかりの勢いだしなあ。
そんな感じで結局トレイズは自分から自身の出自を明かすことすらできずに、ヘタれたままリリアにばれてしまったわけで、なんというかこのままでこぼこコンビとして面白おかしく平和にやっていってくださいという感じ。先に続けられるストーリーではありますが、幸せになるのがほぼ確定してそうなので、なんか無理に出さなくてもOKな雰囲気もありますね。
ともあれ、時雨沢恵一らしい、あっさりとしたラストですが、何、一つの旅の終わりなんてそんなものなんでしょう。先にはまだまだ道は続いているのだし、ふたりはどうせ誰が止めようとも新しい旅にきっと発っていくでしょうから。
hReview by ゆーいち , 2007/06/03
- リリアとトレイズVI 私の王子様〈下〉
- 時雨沢 恵一
- メディアワークス 2007-04
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