嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸

2007年6月17日

stars 問題作? 確かにこれをするりと受け入れられるのはちょっと病んでるかもね

8年ぶりの誘拐事件と時を同じくして発生した猟奇殺人事件。主人公のみーくんは、かつてともに誘拐事件に巻き込まれてしまったまーちゃんこと御園マユと同棲を始め、そして彼女の家には誘拐されたことになっている小学生の兄妹が囚われていて……。

もう、この冒頭からして病んでますね。なんの脈絡もなく誘拐を行うまーちゃん、それを当然として受け止め、けれども人間的な対応でふたりの面倒を見るみーくん。上辺だけで、嘘だらけの会話をする担当精神科医の恋日女史や探偵よろしくみーくんに接近を図る奈月女史。個性的なキャラが登場しつつも、中心にいるみーくんとまーちゃんの手遅れに近い壊れっぷりと、それでも当たり前に流れていく日常のギャップが空恐ろしい感じです。

終盤の種明かしは、この手のストーリーでは良くあるような叙述トリックですが、その背景となる事件の陰惨さがかなりのものなので、気付かされたときの衝撃もなかなか……。それを経ても、まーちゃんが兄妹を攫った理由は分からないですが、あるいは互いの利害の一致があったりしたのかなあとか思っても。……あぁ、でもまーちゃん側には一理としてない気もするしなあ。過去の事件になぞらえた〈何か〉を実行しうるほどに、彼女に理性的な部分が残されてるようには思えないし。

表紙で煽られているほどの、問題作感は私は感じないのですが、主人公が似た雰囲気を持つ、西尾維新の戯言シリーズとか読んでるからかな。あっちもぶっ飛んだキャラばかりだったし。
まぁ、表紙を見て、手にとって、帯を外しつつ裏面を見て、さらにはカバー裏を見て驚愕させられてと、なんというか装丁も含めて、この狂気の片鱗を感じてくださいというにおいがぷんぷんしていますので、これから読まれる方はそこを踏み絵にしてみてはいかがかと。

……でも、最近の日常の不穏当な事件の多発具合を見ると、こういう世界は決して遠くもないのかなあとか思ってもしまうんですよね。

hReview by ゆーいち , 2007/06/17