壮大だけど難解なストーリー
前巻のラストにてついに邂逅を果たした「おれ」と「ぼく」。トールと徹という二つの人格が、葵の描いた物語というほんの些細な接点から一気に収束していく様はなかなかに感心させられます。
テーマ的に、様々な人格を一人の肉体の中に有するという、「レギオン」たるトールの、自身が失われる事への恐怖や、葛藤、過去の記憶への信の置けなさ、あやふやさなど、ひたすらに重いストーリーで、救いらしい救いといえばラストの再会シーンくらいで、親友や、幼なじみも喪い、さらにはこれから先に生きていかなければいけない世界は相も変わらず衰退の一途。人類という種の先行きはともかくとして、トールという存在に救いがもたらされたお話ではありますが、過去の記憶の取り返しのつかなさを思い返すと、やはり救いの少ないお話だったのかなあと。
徹と葵の、過去の時点での距離の詰め方とか、物語を創り上げることへのひたむきさとか、日常的なシーンの暖かさを抱きながら、唐突にそれが奪われてしまったという不条理さに、納得しづらいこともあり、なかなか手放しで本作のラストを褒めたりはできないんですけどね。
現在と過去の記憶が入り交じり、主観の在処がどんどん曖昧になっていく過程で、読みづらさも感じたりしましたが、一本芯の通った、骨太なストーリーでしたね。
hReview by ゆーいち , 2007/06/23
- レギオン 2―きみと僕らのいた世界 (2)
- 杉原 智則
- メディアワークス 2007-05
コメント
コメント一覧 (1件)
[杉原智則] レギオンⅡ ― きみと僕らのいた世界…
現代の高校生の風見徹と「異海」と戦うために騎体に乗る兵士トールというふたつの世界が、交互に描かれていた物語「レギオン」の続編にして完結編ですが、いやあ、すばらしい。まさ…