マージナル

2007年6月25日

stars 彼岸と此岸の境界線 そこに立つ主人公は何を思う?

決して人には言うことのできない嗜好を持つ主人公・摩弥京也。猟奇的な殺され方をしたクラスメイトの葬儀で出会った、被害者の妹・南雲御笠に、昏い衝動を感じながらも、表面上は犯人捜しの協力関係を築き、真相に迫ろうとするが。

殺人に快楽性を求める性癖を持ちながらも、その一歩を超えることができない臆病者・マージナルと自らを定義し、日常と非日常を別の仮面を付けて無難に過ごしてきた京也が、御笠と出会い、事件を追ううちに惹かれていき、そのことで葛藤が生まれたり、と内容的にはかなりヤバめのテーマを扱っていますね。社会情勢が情勢なだけに、何かあったらやり玉に挙げられるタイプの作品ではあるような。グロテスクな描写や、人間のどす黒い側面やら、人によっては嫌悪しそうな内容ですが、まだまだどこかで内容にセーブがかかっているように感じますね。まぁ、やり過ぎるとそれこそ発禁ものだし、ライトノベルという土俵ではこれくらいで十分に踏み越えてしまった人間の異常性というものは伝わるでしょうし。

京也と御笠の奇妙な協力関係の結成から生まれた、御笠の一方的な勘違いとか、何気に中盤は気の抜けたコミカルなシーンも多いですが、全体的にはかなりシリアス。今回の物語の敵方となったキャラは、やってることのわりに小物感が強くて、作品全体を通して、彼に対しての脅威感などがほとんど感じられなかったので、主人公らが感じているほどの緊迫感などが伝わってこなかったなあ。

ただ、その背後で起きていた、もう一つの事件についてはかなり意外。表だって言葉を交わし、笑い合っていたような人物が、あっさりと退場させられたり、逆に当然のように刃を振るってきたりというのは、舞台が日常の象徴的な学校という部分において、皮肉さと嫌らしさを感じました。

ラストの京也の告白とかは、シーン的に美しいし、他にも要所要所ではっとする表現はあったりするんですが、作品として狂気や禁忌を描こうとする割に、そこに乗せられるべき重みが十分に伝わってこなかったのが、今ひとつ印象に残らない要因だったのかな。

hReview by ゆーいち , 2007/06/25

マージナル

マージナル
神崎 紫電
小学館 2007-05-24