殺×愛7-きるらぶSEVEN

2013年4月18日

stars これぞ大団円!

来夏を喪い、再び神代の街に戻ってきた密は、絶望と諦観の中にあってすべてを拒絶して、緩やかな世界の滅びを見届けるべく、ただ機械的に動くだけで。サクヤの、高天原先輩の、同級生たちの声も届くことはなくて。

ここ数巻の救いのなさここに極まれりといった序盤。これまでさんざん偽悪を気取った密の、とことん追いつめられた、演技ではない最底辺まで落ちてしまった精神状態が痛々しく、また彼を想うことを諦めきれないサクヤの報われない献身も、同様に見ていられませんでした。
そして、唐突にアダムの口から語られる、世界滅亡の真意。これまで明確に密らを追いつめ、排斥しようとしてきた彼が語るには、軽すぎる感すら覚えるメタ的な真実。あるいは、その後のエンドロールで語られたことこそが、現実であり、そこへ至るまでのストーリー自体が、誰かが手慰みに想像したかのような、ひとつの悲劇であるといわんばかりの意地悪さ。

滅び行く世界とは逆行して、次第に人間らしい、学生らしい生活を取り戻していく人々の姿が眩しく映るエピソードでした。
そして、真に相思相愛になれた密とサクヤの過ごした束の間の蜜月が、どうしようもなく美しく描かれたエピソードでした。
手遅れになってようやく気付いた日常というものの愛おしさを、ついに実感することのできた密の選択は、世界の運命のためでもなく、見も知らぬ誰かのためでもなく、近しい友人のためでもなく、サクヤただ一人のためのものであり、けれどそれは言葉にされなくても皆から祝福されているかのような選択。ふたりで過ごしてきた一年という時間の集大成が、まさに結実したかのような幕引きでした。

加筆されたエンドロール部分については、これまでの鬱々とした展開、ひいてはストーリー全体を台無しにしかねない内容かもしれませんが、これは純粋に、当たり前にあり得た世界の、日常の延長としての未来を描いていたと思えば、ご都合主義とかそんな言葉は意味なんてないでしょう。
最後の最後に辿り着いた結末が、この上ない大団円であったことを、嬉しく思いました。
そして、殺し合うために巡り会うのではなく、ただ純粋に、恋を謳うために再び巡り会ったふたりの未来に心からの祝福を。

hReview by ゆーいち , 2007/07/04

殺×愛7-きるらぶSEVEN

殺×愛7-きるらぶSEVEN
風見 周
富士見書房 2007-06