鯨が舞う空の下 少し不思議な けれどどこにでもある物語
さかのぼること10年前、震災を境にして突如空に現れた幻のような鯨。そんな不思議な風景が、当たり前のものとして受け入れられた浅霧町。不思議な鯨が大好きな少女・真琴と、ひょんなことから知り合いになった洋助の、普通で、不器用で、優しい物語。
3編の短編で構成される本作は、ごくごく普通の日常を描いています。空に鯨が泳いでいたり、花火大会の夜には不思議な出会いがあったりするけれど、物語を紡いでいく真琴と洋助は元気が有り余っていたり、微妙につっけんどんなところがあるくらいの、どこにでもいそうな女の子と男の子。受験を控えた中学3年の時間を、友だちと過ごしたり、気になる子と少しだけお近づきになったり、誰かの夢を手伝ったりして、普通に過ごしていくごくごく自然な時間が感じられます。
真琴は勉強嫌いだけれど、夢中になったら一直線で、相方の洋助は何事もそつなくこなす万能タイプで、なんだか良いコンビ。互いの互いへの気持ちが、仄かな恋心だとも思わずに親友らしい付き合いをしつつも、だんだんと距離が近付いていく空気が良い感じです。
物語的に大きな盛り上がりはないけれど、漠然とした将来に悩みつつ、それぞれの道の選択に後悔せず、気持ちを伝え合ったふたりの姿が爽やかで、あっさりだけれど気持ちの良い終わり方でした。
hReview by ゆーいち , 2007/07/20
- 海をみあげて (電撃文庫 ひ 4-2)
- 日比生 典成
- メディアワークス 2007-07
コメント
コメント一覧 (2件)
青春してますなぁ…【海をみあげて】…
今月は電撃であんまり読みたいもの無いんですが、これだけは早く読みたかったので購入。
[http://www.bk1.co.jp/product/2796796/p-holyknight1146 海をみあげて]
前作[http://blogs.yahoo.co.jp/blacktomcat1927…
[日比生典成] 海をみあげて…
10年前、浅霧町を襲った地震の直後から、町の上空を鯨が飛ぶようになった。姿は見れても触ることはできない鯨だが、潮だけはそのまま雨となって町に降り注がれた。そんな空飛ぶ鯨を…