岡崎 裕信が紡ぐ新たな紅いバラ
CRS 日本支部を訪れた双子の姉妹、真理と倫理。先天性吸血鬼として目覚めてしまった倫理を病気と断じ、治療するために奔走する真理。対照的に自分の変化を受け入れ、CRS の一員となることすらも冷静に視野に入れる倫理。そんな中、吸血ウィルスを研究する組織とのいざこざも発生し、そこで生まれた後天性吸血鬼はこれまでとはちょっと違った能力を発現。何やらその裏には胡散臭い人物がいるようで……。
前作『ウェディング・ドレスに紅いバラ』の続編は、田中芳樹から岡崎裕信へバトンが渡され執筆というちょっと面白い形態で発刊。作品の雰囲気的にも、上手く前作を引き継いでいるようで、違和感はあまりなく読むことができました。もっとも、私はこれまでの岡崎裕信作品のような、ちょっと癖のある文体が氏の特徴で売りでもあるとも思っていたので、意図的に文体を似せているのだろうと推理できますが少々残念だったり。
こぢんまりとしたCRS という組織とは逆の思想で人間社会にとけ込もうとする新たな組織が出てきて、対立構造が生まれたのかな? そのメンバーだったりしたキャラは結構理性的で、激しい組織間の抗争というよりは、騙し合い化かし合いみたいな感じで話が進みそうに感じましたが。相手はなかなか手強そう。今回登場した真理・倫理の姉妹も大きく関わってきているだけに、その年齢に分不相応な荷を背負わされてしまったふたりが、どのように成長していくのかも興味深いですね。
前巻と違って、淳司と雅香の間の感情も、少しずつラブ寄りになってきた感じ。こういう微笑ましいやりとりはみててにやけてしまうので、もっとやってください。吸血という行為に特別な意味を見いだしてしまう雅香の照れっぷりやら、そんな彼女のはじめての相手になれなかった淳司の嫉妬っぷりやら、初々しいったらないですわ。双子の登場で彼らの間も引っかき回されてきそうだし、関係の進展にも期待したいところです。
hReview by ゆーいち , 2007/08/09
- 夜空の双子座に紅いバラ
- 岡崎 裕信
- 集英社 2007-06
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