アマデウスの詩、謳え敗者の王 ─ 黄昏色の詠使い〈3〉

2008年8月18日

stars トレミアアカデミーに迫る謎の灰色名詠使い 異端の集うその場所の中心に立つのはネイト? それとも……

各地の研究所が謎の灰色名詠使いに襲撃される事件が続発。動き出す超越者たちの組織〈イ短調〉 3年前にイブマリーの元を訪れた老人の語る言葉。果たされた約束と、これから結ばれる新たな約束。ついにトレミアアカデミーに灰色名詠使いの手が伸びるとき、ネイトは再び夜色名詠を、自らの言葉で詠い上げる。

ラスボス格と思われていた灰色名詠、ラスティハイトの名も、さらなる脅威を演出する前座にすぎなかったのかといわんばかりの怒濤の展開。自らを敗者と名乗り、トレミアアカデミーを襲った男の語る言葉。異端たる夜色名詠を使うネイトを軸に、クルーエル、エイダ、カインツ、超然たる才能と実力を持ち得た人々が集うことも、時を同じくして様々な事件が動き始めることも、世界に秘められた何かによる、仕組まれた事象であるかのような物言い。作中でほのめかされた、最終的な脅威となる存在、その名に秘められた意味を考えるに、これから先、ダークな展開になっていきそうな予感もしますが、はてさて……。

ネイトとクルーエルの関係が、いい感じに変化していってるのが大変嬉しいですね。姉ぶってネイトを危険から遠ざけようとしたクルーエルが、ネイトに頼り、その信頼に真摯に応えるネイトの姿が、まっすぐで純粋すぎてまぶしく映ります。守り守られるという関係から、ともに並び立ち、同じ道を歩むという決意に至るまでのお話でもありました。なんというか、年相応のままごとじみたお付き合いが、じれったくも微笑ましい二人ですね。
エピローグのふたりのやりとりはとんでもない破壊力だし。クルーエル、狙ってやってるとしたら恐ろしい娘! なんというか、このシーンだけで十二分に萌え転がってしまう。何この奇襲。

セラフェノ音語を解読できれば、裏設定とかいろいろわかるんだろうけど、敷居高いなあ。作中で学生たちが使ってる辞書みたいなの、巻末付録とかに付けません? でも、アマデウスの名の意味とか、約束という言葉とか、その辺の絡みを見ていると、緋色の少女に対抗できるのは夜色名詠だけであり、そうすると、ネイトとクルーエルの今後の関係は、かなり切ない方向に変化していきそうな気がするなあ……。

hReview by ゆーいち , 2007/08/14