ヤンデレと嘘つきの偽りだらけの……
入院中の僕を追ってまーちゃんが入院してきた。自分の頭を花瓶で殴りつけ、流血のまま、自らの足で。時を同じくして院内で発生した患者の失踪事件と、まーちゃんの傷害事件。元カノの長瀬透と彼女の妹・一樹との再会。そして悪意は何処にでも根付いている。それに気付くか気付かないかは別にして。
まさか続刊が出るとは思わなかったなあ、な危険な作品の第2巻。みーくんとまーちゃんの関係については、事件に巻き込まれた過去から、再会し、互いを認識しあった時点でその形が確定しているような思いがあったのですが、偽善と偽悪を使い分けつつ自分たちの平穏を守り、日常を求めていくみーくんの嘘まみれの中に時折混じる本音に少し感じ入るものがあったり。
衝撃的な展開という意味では、前巻でこれでもかとやられてしまったので、新キャラ投入とかテコ入れありつつも、それほど大きくはなく、しかし手堅くまとまった作品に仕上がってますね。まぁ、みーくんの外道さは相変わらずで、ホント、自分とまーちゃんの世界を守るためならば目的も手段も選ばないというか。
過去の事件とのつながりが、なかなか上手い形で今回のエピソードに織り込められていて、そしてそれ故に今回の結末も苦い味わいであることが、この作者の作風ということなのかな。
罪を罪と認識しないみーくんの主観において暴かれた彼女と彼女の罪は誰が裁くのか。果たして、望まぬ形でその罪を赦されてしまった彼女らは、その重みを背負って日常に帰ることができるのかどうか。受けた悪意を濾過し純化し、送り返すようなみーくんの所行は、今回も変わることなく外道じみていましたとさ。
hReview by ゆーいち , 2007/09/15
- 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 2 (2) (電撃文庫 い 9-2)
- 入間 人間
- メディアワークス 2007-09-10
コメント
コメント一覧 (5件)
作者がみーまーを果たして肯定しているのかどうなのか。
作品からは計りきれない部分があるように思います。
個人的にはそこが微妙に引っかかるところ。
みーまーを物語上断罪「しない」のかそれともそれは重過ぎて「出来ない」のか。
もしこの作品を続けていくつもりなら、何処かでみーまーは性根を叩きなおされる必要があるのかもしれません。
それが彼等の望まざる結果であったとしても。
作者が袋小路という形で終わりを準備しているのか、何らかの「救い」を用意しているのかはわかりませんが、私には正直このまま嘘で幸せを維持しようとする足掻きが続けられるとは思えないんですよね……
ふたりにとっての幸せな結末というのは、極端な話、作中でもあったような無人島で誰とも関わらずに生きていくという展開くらいしか浮かばないんですよね。
少なくとも、現状では、恋日や奈月といった、彼らを危険視し、あるいは救おうと手を差しのばす人々がいて、けれどもみーまーはその手を振り払う選択肢しか持ち得ていないような感じですし。
自らを嘘つきと嘯いて、他人との関わりを交わし続けるみーくんと、心を閉ざしみーくんとふたりだけの世界しか目に入らないまーちゃん。ふたりの歪みを叩いて潰して、否応なしに一から積み上げ直さなければいけないような試練が用意されているのかどうか、確かに気になりますね。
歪みを抱えたまま、平和な日常を望むという、その行為自体がさらなる歪みを呼び寄せているような現状、自分たちが抱えている罪の数々を自覚する日が来るならば、それがそのまま断罪につながるような気がします。そういう意味では、ふたりの関係の致命的な崩壊、あるいはまーちゃんが過去を思い出し、目の前にいる人間が誰かを自覚するとか、それはそのままみーくんが内心恐れている罰の形なのかもしれませんね。
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