海原零新シリーズ開幕 絶世の美女チェリースカの正体は実は……
エルザ共和国最高に位置する名門ウィン・ゼ・マシュテバリ学園。そこに通う主人公・綺羅崎ヒロは、やむにやまれぬ事情により、学園を独善的に支配する理事長・ギルコの手先として周囲の学生から「犬」と蔑まれつつ生活を送っていた。そんなある日、ギルコの指示で行った工作活動に失敗し、辛くも逃亡した道中、ヒロは蛇の姿から絶世とも言える容姿を持つ美女へと変身を果たすチェリースカと出会う。
物語の立ち上がりのエピソードだけあって、説明がかなりの部分を占め、この独特の閉鎖的な学園の成り立ちや、国家情勢に至るまでこれでもかと積み上げてくるような設定の数々。独特すぎてわかりづらい部分もあったりしますが、優生会に属する登場人物たちの性格の歪みがこれに起因するのは十分以上に伝わってくるかなあ。良識派と言えるような人物はいないような……。
そういう点もあって、好感が持てるというシーンは少なかったりするのですが、海原零はたまにお下品なシーンを入れるのが好きなんでしょうか。『銀盤~』でも初期は結構そういうシーンもあったりしたけど、本作ではいい感じに小休止的に挟まれているような印象。ヒロがチェリースカを意識しまくったり、何やら大変なことになったりと、本人は笑えないような状況でもハタから見るとなんとも滑稽に見えますね。
ヒロと幼なじみの真希の関係は、かつての出来事のせいかぎくしゃくしつつも、彼を無下にできない真希の面倒見の良さが好感。距離を置いていた真希が、事件を通してヒロに再び近づいて、その関係も少しずつ好転していきそう。そこにチェリースカが微妙に引っかき回して、混沌ともしていきそうですが。
チェリースカの目的とか、彼女の敵とか、明かされない部分はこれからの展開に期待。影の薄かった黒幕っぽい優生会の会長ウィリアムとは何やら因縁がありそうだし、そもそも学園を思うがままに支配しようとするギルコも、まだ深い部分で何かを抱えていそうだし、一癖も二癖もあるような四面楚歌の状況下、ヒロらはどうやって切り抜けていくことやら?
hReview by ゆーいち , 2007/10/03
- 薔薇色にチェリースカ (集英社スーパーダッシュ文庫 か 6-12)
- 海原 零
- 集英社 2007-08
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