踊る世界、イヴの調律 ─ 黄昏色の詠使い〈4〉

2008年8月18日

stars 世界の秘密が明かされる第4巻

灰色名詠の学院襲撃から体調を崩したクルーエル。ネイトは彼女の力に、支えになりたいと願うものの、クルーエルはネイトに弱さを見せない。そんな無理が祟り、再び倒れ意識を失うクルーエル。彼女の中で起きている事態は、ネイトも、ミオも、そしてイ短調の人間でも分からないまま。
一方、世界の果ての忘れられた孤島で緋色の少女と言葉を交わすカインツ。彼に希望を見いだす少女が語るは、忘れられた世界の真実か、ネイトへの怨嗟か……。

クルーエルとネイトの想いの通じ合っている様が素敵で幸せそうで、けれど大事な部分で互いを必要以上に大切にしすぎて、それがすれ違ってしまう様は悲しくて。出会って二ヶ月程度の時間の長短は、ふたりにとっては関係なく、すでに不可分にまでなってしまったふたりの運命が周囲を巻き込み激動する第4巻。

クルーエルの身を蝕む、始原にして忘れ去られた名詠色と、心に宿った謎の存在。様々な人々の口から語られる、忘れられていた、隠されていた世界の秘密が少しずつ明らかになってきています。立て続けにいろいろなことが語られつつも、その展開にゾクゾクさせられ、まだ残された謎に思いを馳せてしまいます。

クルーエルを支え、彼女を守りたいと願うネイトは幼くて、名詠の力も、純粋な戦う力も、彼の周りにいるある意味超人たちにはまったく及ばず、けれどネイトの純粋な願いと想いはクルーエルを守る力に確かになっています。未完成で神精を呼び出すことも叶わぬネイトの夜色名詠。彼を忌避し、憎悪し、排除しようとするアマリリス。そんなアマリリスを宿しつつ、それに屈せずネイトを信じることを選んだクルーエル。思惑が錯綜しつつ、けれどその中心にあるふたりの想いの純粋さ、透明さに心打たれますね。

次回、ここまで広げられてきた大風呂敷をどのように畳むのか、非常に楽しみです。

hReview by ゆーいち , 2007/11/23