だからせめて最後は優しい嘘で
死者の最後の想いを綴ったシゴフミを、遺された人に届けるフミカとマヤマの物語。今回はちょっと構成が独特になっていますが、「嘘とオーロラ」「輝けるもの」「Rainy Day」の3編を収録。
何はともあれ、最初のお話「嘘とオーロラ」に泣かされます。というか、あの内容は卑怯だ。幸せにするための嘘、幸せになるための嘘、だまされやすいと自覚する主人公の切ない内面の揺れ動きが、ツボで琴線揺さぶられまくり。これまでもちょっといい話系はあったけれども、この物語はいろいろな意味で、衝撃的だったかなあ。
変な爺さんが遺した謎かけに少年少女が振り回される「輝けるもの」はコメディ調。フミカとマヤマも手玉に取られ、マジギレモードのフミカもかわいらしいですな。
最後に収録された「Rainy Day」は、これまでで初めてフミカ以外の配達人が登場。そして、ここで遺されたシゴフミは日の目を見るのか見ないのか。作中の設定を上手いこと読者に伝える役目も果たしてそうですが、物語自体も平和の対極にある戦争という状況下で、死者が残す想いというのは決して優しいものではないという厳しくてやるせない側面を見せてくれます。フミカが「今」活躍している時間軸と時代的にどれくらい離れているのかがわからないですが、何気にリンクしたりするのかな。
カラー口絵は、本編の場面を絵にしたのではなく、フミカが配達人になった過程の欠片が描かれたのかな。同じ名前を持つもう一人のフミカとの出会いが、彼女に何を決意させたのか、とか今後語られる日が来るのでしょうかね。
アニメは、小説版とはまた別の配達人が主人公になるみたいなので、新鮮な気持ちで見られそう。
hReview by ゆーいち , 2007/11/29
- シゴフミ 3―Stories of Last Letter (3) (電撃文庫 あ 17-7)
- 雨宮 諒
- メディアワークス 2007-11
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[雨宮諒] シゴフミ3 ―Stories of Last Letter
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