吸血鬼のひめごと―The Secret of Vampires

2008年8月18日

stars 完結から2年 まさかの続編登場!

大切なひとたちとの別れから2年。時間は優しく、それ以上に残酷に、彼らの面影をレレナの中から薄れさせつつあった。今ではもうぼんやりとした面影しか思い出すことのできなくなってしまった優しい人たちと、今、この場所で自分を慈しんでくれている両親のおかげで、半吸血鬼として生きざるを得なくなった彼女は、静かに、平穏な日々を送っていた。朧と名乗る『主人』たる吸血鬼が、彼女の学校に現れるまでは……。

──まさか続編が出るなどとはお釈迦様でも思うまい。というか、他のシリーズはイマイチだったから、本作が出たとかの理由だったらしょんぼり過ぎる、な『吸血鬼のおしごと』の続編。

前作のラストで、ただひとり取り残されたレレナの回想から始まる本編。最初の2ページでいきなり涙腺やばくなる私はどんだけ思い入れ持ってるんだ。いや、強烈に印象に残ってはいるけれど、そこまでとは思わなかったけれど。名前も思い出せないのに、亮二や舞と暮らした日々だけはしっかり覚えていて、戻らない日々、幸せであったと思える日々がかつてあったという事実に、折り合いを付けきれないレレナがなんとも悲しい。

新しい物語のスタートは、朧という少年の姿をした吸血鬼の『主人』との邂逅から。唯一といっていい友人・絵里香、亮二の面影を重ねてしまった少年・青磁らとの交流。そして、再び待ちに暮らす人々の脅威となりうる化け物 “貪” と、朧と敵対するもう一体の吸血鬼。物語の始まり方は、前作の1巻を彷彿とさせつつも、最初から雰囲気がかなりダークに感じられます。もう、こっち方面で進める気満々なんですかね。

レレナが過去を引きずり、亮二の吸血鬼としての面影を朧に、人間としての面影を青磁に重ね、大切な親友であるはずの絵里香との深い断絶を感じたまま次巻へ続く。謎も残されたままだし、問題も全然解決していないし、今後の展開もなんだかんだで楽しみに思えてしまいます。いや、もう、ダークだろうとなんだろうと慣れてしまえばどんとこいですよ?

hReview by ゆーいち , 2007/12/09