予想のさらに上を行く破滅的な結末
雪乃を攻撃し重傷を負わせ、マナ・瑞姫とともに姿を隠す勇路。知らず知らずの間に増殖していく異形と狂気。“赤ずきん”に見立てた泡禍の犠牲者が増えていく。その根幹に未だ気付けぬまま、蒼衣は彼らの足跡を追う。全ての始まりは何処だったのか、狂気の源泉は何なのか。全てのかけらが揃ったときに浮かび上がる物語の真の姿は予想だにしないもので。
はい、赤ずきん編の後編ですね。しばらく時間が経ってしまったので、前編の内容を思い出しつつ読み進めなければいけません。やっぱり、前巻のあらすじがほしい……。
毎回毎回、童話を独自の解釈で、惨劇の登場人物の配役にうまいこと当てはめてくれる本シリーズですが、今回は思いもよらない方向から物語の全容が明かされてきました。登場してきた新キャラの誰もが、一癖あって怪しく見えてしまい、そのせいで勝手に混乱させられてしまった部分がありますが、しかし、この結末はあまりに後味が悪すぎますね。気付いたときにはどうしようもなく手遅れで、取り返しなんて付くはずもないという、完全な負け戦。
そして、事件の事後処理も含めて、まさに惨劇としかいいようのない終わり方。確かにこういう行いをする人間がまともであるはずもなく、かろうじて平常に縋ろうとする蒼衣すら、今回の事件を通して、ひととして超え難い一線のひとつを超えてしまったようにも見えます。淡々と泡禍の構造を語る彼の姿も、やはりどこか壊れて見えてしまいますね。
相変わらずグロ描写も絶好調。終盤のシーンはかなり来ますね。なんというか、自分の内臓こねくり回されてしまうような不快さを感じてしまいます。
なんだか、最後の最後で不穏な残り火が消えないまま終わってしまいました。神狩屋の言葉と合わせると、今後の大きな伏線となりそうな予感がしますが、はてさて。再び彼が現れたとき、その正気と狂気を誰が見抜けるのでしょうかね?
hReview by ゆーいち , 2007/12/24
- 断章のグリム 6 (6) (電撃文庫 こ 6-19)
- 甲田 学人
- メディアワークス 2007-12-10
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[甲田学人] 断章のグリムⅥ 赤ずきん・下
泡禍による失踪事件の調査の最中、雪乃は同じ<騎士>である勇路の攻撃を受けて、重体に陥った。雪乃と他人との緩衝材になれればと思っていた蒼衣は自分を責め、近いうちに目覚める…