ゼロの使い魔〈13〉 聖国の世界扉

2013年4月18日

stars 郷愁の念に揺れるサイト ルイズの選択 そして物語は大きく動き出す

ロマリアをお忍びで訪れるアンリエッタ。教皇から打ち明けられた秘密と、聖地奪還・ガリア打倒という大きな目的のため、アンリエッタはルイズらをロマリアへ呼び寄せる。
サイトは自分の世界を懐かしみながらも、ルイズや仲間たちのいるこの世界で生きていく決意を固め、ルイズはそんなサイトに側にいてほしいと望みながらも、彼の本当の幸せがどんなものなのか悩んでいて……。

12巻のトンデモな展開からこう繋がるとは。この振れ幅の大きさに驚愕。たまにこういうすばらしい話が出てくるからヤマグチノボルは侮れない。

ロマリア教皇の号令の元、聖地奪還、その前哨戦としてのガリア打倒。人々を救うためといいつつ、自分が認めない存在を何の躊躇いもなく排撃すべしと決断する教皇の揺れない信仰心は、サイトの目からどう写るのか。サイトが頑なに力によるエルフからの聖地奪還を拒んでいるのは、教皇に対するまだ形のない疑念から? いや、普通に読み進めていくと、教皇の出来過ぎた人柄そ逆に胡散臭く感じてしまいますが。なんかラスボス臭? 彼が握る世界扉の魔法は、物語の大きな転換を呼ぶし。ガリア王の狂気に満ちた進撃と、それを迎え撃つロマリア。次巻は激しい戦争になりそうな展開。

そして、そんな激戦を前に、サイトとルイズの関係にも大きな変化が。互いに自分の好意だけを押しつけるような関係から、互いを大切にする関係に。相手のことを思うからこそ、自分の苦しみを甘受できるだけの成長が、サイトがこの世界にきてからの1年という時間で成されたということ。

1年という時間の流れを否応なしに実感させられたサイトの郷愁の念と、サイトの幸せを考えられるようになったルイズの想い。悲しくすれ違ってしまったふたりの物語は、ここにきて大きな岐路に立っているようですね。

hReview by ゆーいち , 2008/01/06

ゼロの使い魔13

ゼロの使い魔13 (MF文庫 J や 1-16)
ヤマグチノボル 兎塚エイジ
メディアファクトリー 2007-12-20