ヴェクサシオンと伊依 対極のふたりの決着のとき!
最終兵器を手にし、虚界に対する人間たちの切り札となった伊依。その責任感の重さから、周囲と少し距離を取ることに、彼女の友人たちは少なからぬ心配と、ほんの少しの不満を抱いて。夏、束の間の休息を得るように、海へと遊びに繰り出した伊依たち。そこで、偶然か必然か行方不明になっていた遊を見つけてしまい……。
ヴェクサシオンと伊依。禁断の怪造生物として恐れられ蔑まれ、望まずにそう成らされてしまったひとりの少女と、理想に燃え、現実に挫け、けれど何度でも前に進もうとがむしゃらに立ち上がり続けたひとりの少女。対極に位置しながら、どこか似通ってしまった天敵同士の決着が付く第8巻。
きれい事で自分の本心を隠してきた自分のずるさを、罠奈や舞弓ら彼女の友人たちから指摘され、ようやく本当の自分の心と向き合うことで、またひとつの成長を果たした伊依。これまでの戦い一辺倒だった彼女の成長とは、別の方向で強くなった感じです。付かず離れずの微妙な関係だった遊とも、このお話を通じてようやく曖昧でない関係になれましたし。バカ騒ぎとかでうやむやにされがちな中で、伊依の恋心とか真面目に描いて決着付けたのにも結構驚きましたが。このことが、伊依や遊の力になってくれればなんとも素敵ですね。
ヴェクサシオンの悲しい生い立ちと、その後、彼女が辿ってきた足跡を知ったからといって、彼女の罪が全て消えるわけではないというのはその通りで、けれど、世界を呪いそのまま果ててしまうことを選ばず、苦しみと敵意にまみれ、力を失っても生きることを選んだ彼女の選択は価値があるもので。遊が彼女に伝えられた言葉は、彼の言葉だからこそ、彼女の奥深くまできっと届いたんでしょうね。伊依の願いは完全には届いていないけれど、天敵として対立し合ったふたりの関係が、何か別の形に変わっていきそうな第一歩でmありました。
虚界の進行は悲哀大公の斥候的な動きのほかは静かなもので、だからこそ、伊依の持つ最終兵器の正体が割れてしまったことが、今後の戦況に大きな影響を与えそう。次回はあとがきを見る限り、4大公の中でも最も強大な力を持つであろう、虚無大公。未だ真意の見えぬ彼との戦いがどうなるのか、いよいよ物語も佳境にさしかかるようです。
hReview by ゆーいち , 2008/01/10
- アンダカの怪造学 8 (8) (角川スニーカー文庫 185-8)
- 日日日
- 角川書店 2008-01-01
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[日日日] アンダカの怪造学 8 Every DayDream
憤怒大公の侵略から三ヶ月が経とうとしている。あれ以来、魔軍の侵略は無いが、魔軍への切り札である最終兵器「独唱第五番」の唯一の使い手となった伊依は、気の抜けない状態が続い…