オリジナルスタッフ手ずからの後日談 出来映えにも大満足
あの錚々たるメンバーを送り出した春、三月からひと月。 並木の桜たちも、春休みの浮ついた気持ちはそろそろ終わりと、生徒たちを戒めるように優しく静かに花びらを脱ぎ、青葉に衣を替え始める四月。
……本編終了後に始まる新たな姉妹の物語。オリジナルシナリオ担当の嵩夜あやと、原画担当ののり太の手による、後日談。
いや~、本編プレーから3年 ((PC版が2005/01/28 発売))経ったんですね、懐かしい。読んでる最中に、当時の記憶がよみがえるよみがえる。さすがに、オリジナルスタッフの手によるノベライズ──というより、これは続編ですな──が今になって読めるとは。眼福でした。あとがきを見る限り、ここで本当に一区切り。その節目となる作品が、こういう形で出版されるのも珍しいのかな。まぁ、キャラメルBOX の方では、ファンディスクとかでちょくちょくおとボクキャラも登場してますけどね。
本作は、一度同人文庫という形式で出版されたものを大幅に加筆したもので、ページ数が200ページくらい増えてるんで完全な新作みたいなもんですね。短編7編とエピローグという連作形式で、本編終了後の1年を、懐かしいメンバーと、新たに加わったひとたちによって綴っていきます。
中心となるのは、瑞穂の妹であった奏。2年生になり、彼女も妹を持つ立場になりながらも、その性格から妹役の薫子と立場が逆転しているように見えてしまう逆転姉妹などとも揶揄されて。けれど、奏が瑞穂たちと過ごした時間は、確実に彼女を成長させ、見違えるばかりの頼もしさも感じさせてくれるくらいになっています。
新しい出会いと必然として訪れる別れを繰り返す、学園での1年という時間で、生まれ変わっていく彼女たちの関係。本編で一度経験したそれを別の形で描き、また別の形の答えをそれぞれ胸に巣立ち、あるいは新しい立場に就いていく。こういう、受け継がれていく想いの形はなんとも感慨深いものですね。
瑞穂たちは脇役に回り、大事な場面では偉大な先達としてアドバイスをしたりしますけど、今、この聖應女学院で、物語を紡いでいくのは奏たちで、そしてその後を続いていく、まだ見ぬ誰かたちも、彼女らの背中を見、そしてそれぞれの物語を紡いでいくんでしょうね。
本編の思い出に浸りつつ、あっという間に読み終えてしまいましたが、あの優しい空気にまた触れることができて幸せな時間でした。あ~、こうなると、また本編引っ張り出したくなってしまいます。なんとも素敵な後日談でした。本編プレー者に限られますが、小説という媒体で、値段も安いのでぜひ手にとってほしい一冊ですね。結構売れてて、今月末に増刷かかるみたいですので、買い逃した方はそのときに。おすすめです。
hReview by ゆーいち , 2008/01/12
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