MAMA

2008年2月7日

stars 小さな少女と人ならざる使い魔 子を求め母を求めたふたりの物語

魔術の恩恵で豊かに繁栄する海沿いの王国ガーダルシア。魔術師の家系サルバドールの直系でありながら、その才能のなさゆえに「サルバドールの落ちこぼれ」と揶揄されるトトは、ある日、神殿の書庫奥深くに封印されている人食いの魔物を解きはなってしまう。これは、片耳を失い、魔力を得たトトと、そんな彼女の傍にいると決めた魔物の、数奇な物語。

『ミミズクと夜の王』に続いて、またしても優しいお話を堪能させてもらいました。

トトと彼女の使い魔となったホーイチのガーダルシアにおける半生は、決して幸福なものではなく、むしろ、その立ち位置からして心安らぐ時間さえ満足に持てない、見えない鎖に縛り付けられたもので、ただただ、互いが互いを必要としている、それだけの儚くも当人たちにとっては血の繋がり以上に強固な繋がりが、ふたりを支えていて。

人と魔物、共に歩むことのできる時間の少なさという残酷と、トトを先生と慕うゼクンとの出会いで生まれた波紋、そして、ホーイチを誰にも渡したくないという行き場を失い、歪んでしまった、けれど本人にとってはどこまでも純粋な愛情の暴走の末に起きた悲劇と最後になされた選択。

形を変え、時間を超えても、培われ育まれた愛が、ついには結実する、報われ、幸福を実感できるラストは良いものでした。

本編の後日談的な位置づけの短編『AND』も良作。主人公となる兄妹のやりとりと、本当の家族でなくとも、その繋がりは望めば望んだだけ深くなるんだという実感。彼らが不器用に歩んできた時間が、トトたちの時間と交わったときに生まれた気持ちは、その後の人生をより良い方向へ変えていってくれるんだろうなあ。というか、妹のミレイニアが、この作品には似つかわしくないくらいに、可愛らしくて良い感じなんですが!

1年ぶりに読んだ紅玉いづきの新作。静かに染みる愛の物語、ぜひご堪能あれ。

hReview by ゆーいち , 2008/02/07

MAMA

MAMA (電撃文庫 こ 10-2)
紅玉 いづき
メディアワークス 2008-02-10