少年は広大な空の下、月を臨む
世界が『混乱』に包まれ数世紀。世界は激変し、人類は衰退の一途を辿っている。身体に異形を抱えた『変異種』は、遙か見上げる鉄の塔・バベルに住まう『純血種』たちの世界の足下でスラムを築き生きている。そして少年は今日も空を仰ぎ、見えない月を探している。
藤原祐のデビュー作。最初っから真っ黒だったんだね。だが、それがいい。
処女作だけあって、またかなり昔の作品なだけに、荒削りな部分やどこかで見たような気になる部分があるのはご愛敬。退廃しきった世界、衰退していく人類、そんな滅びを間近に控え、けれど生きていかなければいけない少年少女の出会いから始まる物語。
いや、本当、容赦ない。登場した名前ありの人物の8割方死んでるんじゃないかってくらいに。主人公といい感じになった少女は、その場面すら描かれず退場するわ、彼の父と姉は、彼の心に傷を生んで、それを癒すことすら許さず遠い場所へ行くわ、敵となる化け物の本体は……だわ。鬱展開まっしぐら。私の方で耐性できているから普通に読めるけど。
行き場所も生き場所もない少年の選択は、運命に導かれたかのようで。これから彼と出会うであろう人びとと、過去に起きた事件の真相。そして、謎にされたままの彼の出生の秘密などなど。まぁ、容赦のない展開でどん底へ突き落としてくれるんだろうか、どっちかっていうと、そういう方向へ期待してしまいますね。
hReview by ゆーいち , 2008/03/20
- ルナティック・ムーン (電撃文庫)
- 藤原 祐
- メディアワークス 2003-09
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