ルナティック・ムーン〈4〉

2008年8月14日

stars 大丈夫。私はあなたを……絶対に、拒絶しないから

フルブルーとの交戦の機会が増えている。ケモノを相手にするよりも何よりも、同じ人間を殺すという行為が、ルナたちの精神を削っていく。ロイドの策略によりエデンと分断され拉致されるルナとシオン。バベルの中、人知れず覚醒していく第七稀存種。そして姿を見せる第三稀存種。残酷な世界の真実は、いつも不意に人を打ち据える。

全滅ルートまっしぐらな印象がどんどん強くなってきている第4巻。そして、稀存種という人ならざる存在の生まれた理由。バベルが目指す世界の変革の方向。重苦しい雰囲気が漂う中、ルナとシオンの結びつきの強さだけが小さな救いに思えます。

自身の運命に絶望したロイド。彼の境遇をなぞるように生きながら、けれど間違えなかったルナ。兄弟のようなふたりの戦いの結末は割とあっさり気味で、むしろ、それ以前のシオンの献身の方にこそ心打たれましたね。ホントいい子だ。

エデンはその用をなさなくなり、バベル内部はその由来通り混乱に満たされ、狂気にも似た高揚感が、ひとびとを破滅へ歩ませていくようなラスト。その先にどんな救いがあるのか、あるいはないのか。結末まであと1巻。

hReview by ゆーいち , 2008/03/22

ルナティック・ムーン〈4〉

ルナティック・ムーン〈4〉 (電撃文庫)
藤原 祐
メディアワークス 2004-11