夢の最果てはね、本人がそれを自覚した瞬間に現れる
志乃の母親の随伴して訪れたパーティ。場違いな雰囲気に恐縮する僕の前に現れたのは鴻池キララ先輩と、厳つい警察官の冨樫さん。先日発見された身元不明の遺体の傍に、このパーティの招待状があったため、捜査に訪れたとのことだけれど。そして、夜も更け、そろそろ帰宅しようとした僕たちは、新たな殺人事件の現場を目撃する。死亡推定時刻と、監視カメラの映像から、犯人は間違いなくとある人物に絞られるけれど、決定的な証拠はなくて……。
謎解きというよりは、志乃の独特の容赦なさで犯人を追いつめ、破滅させていく過程がぞくりとさせられたエピソード。堅い殻で自らを覆って、本当の姿を隠していた犯人を、非道い方法で止めを刺してくれました。でも、これ、結局犯人は自白もしてないし、万事解決ってワケじゃないですよね。
相変わらず、ミステリ要素よりは志乃と僕の関係の変遷の方がメインのお話で、僕に対する志乃の感情が、少しずつ波を持ってきているような感じ。僕のために着飾ったり、褒めてもらえないことに落胆してみたり、別の女にこっそり会いに行くと視線で射殺しにかかってみせたりと、そんな感情の起伏が良い方向に向いてるように思いますね。
けれど、彼女の中に抱えた暗闇の部分は、依然として残るわけで。それも含めて、志乃が僕との在り方をどういう風に定めていくのか、そろそろクライマックスとのことなので、答えが示される日も近そうです。
しかし、鴻池先輩は、なんだか乙女チックモードのスイッチが入っていたり。ああいう、プレゼントのおねだりは、ありがちだけれど、ぐっと来てしまいますね。鈍感な僕は、多分何も気付かないんでしょうけれど、さらに修羅場に陥る可能性、上がってません?
hReview by ゆーいち , 2008/03/23
- SHI-NO夢の最果て (富士見ミステリー文庫 76-7)
- 上月 雨音
- 富士見書房 2008-03-08
コメント