セキララ!!

セキララ!!

stars 誰にでも、人には言えない過去がある。おれにだってある

あ……ありのまま、今、起こった事を話すぜ! 『放課後、大通りで“火琉奈”に会った』。白昼夢だとかイタいファンのコスプレだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ。もっと恐ろしいもの片鱗を味わったぜ……。

主人公の拓巳が過去に書いたオンライン小説のヒロインが、そのままの姿と能力で現実に現れ、さらに物語の筋をなぞって敵まで現れてさあ大変。過去の自分をぶち殺したくなるような黒歴史の産物が、今、傲然と牙を剥く! って、これはいろいろな意味でイタい(笑) 過去に小説を書いたことのあるひと、また現在進行形で書いているひと、そのどちらもが通ったかもしれない黒歴史が、白日のもとに晒されたとしたら……。拓巳の場合は、ネットでのイタい行動がきっかけで、全てを封印して一般人として生きることを選んだのに、ここに来て過去の恥部を洗いざらい見せつけられる苦悩は、筆舌に尽くしたいのでしょうね。

でも、笑える。こういう厨二病全開な設定を、上手いことギャグパートに盛り込んでますね。出てくる用語とか、作中小説『邪王聖戦記』の地の文とかが、イタくてイタくて笑えてしまう。こういう方向性の物語を書いているひとは、また違った意味で転げ回りたくなるんでしょうね。

登場キャラも、なんだかんだで、拓巳の過去と関わっている面子ばかりで、主人公の彼女の桜さんが、実は……、な展開は驚愕したというか大笑いしたというか、世間の狭さとネットの恐ろしさ、そして空気の読めない厨房の行動力に感動すら覚えます。脱オタクを図った拓巳と、現役のオタクである久実本やGTさんとの間にある、ギャップがまた壮絶で壮絶で。なんか、こんな良識派な主人公は久々に見た気がします。

リアルとバーチャルの混合具合としては、『ラブ★ゆう』とかを彷彿とさせますが、それとは別方向に突き抜けた厨二でテンプレな展開なのですが、それも含めて、この作品の空気を見事に作っていると思いました。こんな風にドタバタな展開を続けてくれるなら、続きが読みたくなってしまいますね。オリジナルの『邪王聖戦記』は、ラストまでやっちゃった系のラストなので、そこへ至る物語をどう変えてくれるのか、続きが出てくるとしたら良い結末を迎えて欲しいですね。

とにもかくにも、このイタさを楽しめるかどうかが、分かれ目の作品ですね。個人的にはとても面白かったです。

hReview by ゆーいち , 2008/03/29

セキララ!!

セキララ!! (ファミ通文庫 は 3-1-1)
花谷 敏嗣 京極 しん
エンターブレイン 2008-02-29

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