L 詐欺師フラットランドのおそらくは華麗なる伝説

stars 恋する若造を止める方など、ありはせんのだよ。この開拓辺境にはな

顔の良さと口の巧さで女たちを騙し世を渡る男、バーン・フラットランドは、開拓辺境随一の成功者、シム・ジュニアの取引の現場に居合わせ、偶然からその取引物《罪人竜の息吹》なる石を飲み込んでしまう。それからというもの、嘘を吐こうとすると口から火を吹いてしまい、商売上がったり。《罪人竜の息吹》を利用し、一攫千金を目論むバーンだが、それを取り戻しに竜の里から降りてきた少女・アーティアに付きまとわれ、シム・ジュニアにも契約の期限を定められ、絶体絶命! 一体どーなる!?

誰もが成功者となる可能性を秘めた開拓辺境で、ようやく訪れたチャンスをものにしようと立ち回るバーンと、《罪人竜の息吹》を取り戻すためにやって来た竜徒・アーティアの出会いから始まる、サクセスストーリー……?

口八丁で世の中を渡って生きるバーンが、嘘を吐こうとすると火を吹くという設定が面白いですね。ぺらぺらと心にもないことを囁きながら、最後の一言でバレてしまったり、あるいは終盤では彼自身の決意を上手く表してみたり、と単なる設定で終わってないあたりがお見事。

開拓辺境の、誰もが成功を夢見る陽気な雰囲気と、その正反対にある、誰かを蹴落としてでも成功を手にしたいという裏面という二極をもった街で、コメディタッチにお話が進んでいくかと思ったら、結構シビアな展開が待っていたり、その変は意外でしたね。

そして、竜徒を討つ〈抗竜党必死開拓団〉団長のブロックさんとかは、脇役かと思ったら何気に美味しい役所。バカっぽく見えて、ここ一番で決めてくれましたね。

バーンとアーティアの関係も楽しい感じ。《罪人竜の息吹》をその身に宿してしまったバーンを、弟子と称してめちゃくちゃな修行に放り込みつつ、逆にバーンから今まで知らなかった人間の街の楽しさを知らされるアーティア。バーンも、アーティアに対する気持ちに気付かずに、土壇場までへたれてる感じですが、最後に男を見せてくれましたね。まぁ、その後のアーティアへの告白は……ご愁傷さま(笑)

アーティアの気持ちを上手く表せない不器用さも、可愛らしいし、このふたりの旅行きはトラブルと楽しさが満載の予感。続きが早く見たいですね。

hReview by ゆーいち , 2008/05/07