言葉で伝えるのは難しいな。音で伝えるほうがよっぽど簡単なのに。
ひょんなことからひもじい思いをしていた変わり者の先輩・音城トリルに、クロワッサンを恵んだ琢己は、彼女のパートナー認定され、何かにつけて付きまとわれ始める。変人だけれど、確かな音楽の才能を持つトリル。彼女に当てられたかのように、琢己もかつての音楽を楽しんでいた思いを蘇らせていく。けれど、琢己の幼馴染みでもうひとりの音楽の天才少女・七瀬凜音は、独特の音楽観を持つトリルと対立しているようで、そして、それは琢己が思っていたよりも、もっと深い部分に根ざしていて……。
いやぁ、音楽を題材にした作品で、出来が良いと嬉しくなりますね。というか、演奏のシーンだったりの楽しさが伝わってくるのが良い良い良い。そんなわけで、音楽を楽しむ、そんな思いがひしひしと伝わってくる作品でした。
変人と評判のトリル先輩と、プロとして活躍する凜音の対立から一転、ともに何かを作り上げていくという展開は、強引に見えてけれどほのぼの。ふたりの対立の根本的な理由が、上手くプラス方向に作用しているのか、論を戦わせる様すら楽しんでいるようで良いですね。
一般人代表的な琢己も、そんなふたりの間に入って、苦労しながらも楽しんでいって、どんどん音楽が好きになっていって、最後は彼女たちと一緒にひとつの世界を作り上げるまでに。こういう前向きに楽しいを描いた作品ていうのは、最後まで気持ち良く読めるから大変好きでございます。本作もその例に漏れず、最後の最後まで楽しませていただきました。
エピローグも心憎い演出、きっと琢己、あとでジュトゥブの意味を調べて悶々とするんだろうなあ。どっちの戦いも負けたくないと言ったトリルの言葉の意味に気付いたときには、もう後戻りもできないかも? そんな戦いも見てみたいと思いつつ、まるごと楽しめた一冊でしたね。
……というか、みかづき紅月、侮りがたし。美少女文庫のシリーズよりぐっと楽しめたんですが、これはこれで、ラノベでの作品も楽しみになってしまいますね。
hReview by ゆーいち , 2008/07/19
- ぶよぶよカルテット (一迅社文庫 み 1-1)
- みかづき 紅月
- 一迅社 2008-06-20
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