私は、どこにでも行ける。だから、私は、ここにいる。
体育祭の準備に忙しくなりそうな9月のある日、蒼美空が十葉市立高校へ編入してきた。彼女の「透と同居してました」発言に、クラスは騒然としつつも、日常の一部として毎日は過ぎて行く。そして、一年に編入した由宇は、彼女なりの新しい生活を築いていて。透の知らない由宇の姿、そんな彼女がいるということに、透は言葉にできない感情を抱き始めて……。
ドタバタ中心のお話ながら、蒼の転入だったり、由宇の自立だったり、そして白い人の目的だったりが語られて盛りだくさん。蒼の三点リーダ多用な台詞はやっぱり目が滑りがちになるけれど、それはそれでキャラの味、か?
由宇が自分の知らない彼女になってしまうということに、不安なのか、独占欲なのか、微妙な感情を持って接してしまう透。体育祭の騎馬戦の件では、本当に大人げない対抗意識を燃やしてかなりはた迷惑なキャラになっていましたが、そんな透が自分の気持ちを自覚して、そして由宇の気持ちを理解する日はそんなに遠くなさそう。
一方の蒼も彼女なりの精一杯で、透との距離を縮めようとしているけれど、やり方間違えているというか、勢い付けすぎというか、こういう性急な行動が、思いっきり誤解を招いているというか……。めっちゃフラグ立ってますが、直接告白できないようじゃ、まだまだ由宇とは対抗できないんじゃないのかなあ。
エピローグではそんな由宇の成長が如実に語られてますね。透に守られるだけだった世間知らずな彼女ではなく、透の悲しみを理解して支えていこうという、そんな気持ちの片鱗が伺えます。その先にありそうな、厳しい戦いが、透の周囲にどんな波を立ててくるのか、そんな試練はそう遠くなさそうですが、果たして……?
hReview by ゆーいち , 2008/07/20
- たま◇なま~こわいものはありますか?~ (HJ文庫 ふ 3-1-5)
- 冬樹忍
- ホビージャパン 2008-07-01
コメント