……不思議なことがあるんなら、見てみたい。わくわくするような非日常があるんなら……俺、見てみたいんだ。
高校デビューに成功した。忌まわしい、痛々しい中学時代の自分と晴れて決別した佐藤一郎は、しかし、夜の学校に忍び込んだその日、魔女に出会った。困ったことに何となく理解できる妄想をまき散らす少女――佐藤良子。彼女に目を付けられ、付きまとわれ、一郎の生活は変わっていく。そして……。
[tegaki]ぐはああああ!?[/tegaki]
こ、これは痛すぎる、なんかかつての自分をいろいろな角度から抉られるような痛さを覚えてしまうお話ですよ。誰だって一回くらいはそんな時期あったよね? 必殺技とか謎設定とかに憧れたよね? ないとは言わせん、ほら、認めちゃいな、そうしたら気持ちよくなるから!! って、ああ、すみません、なんか古傷が痛んでしまって。
そんな感じで田中ロミオがラブコメ書いたら変な化学反応起こしたのか、やたらと一部の読者の心を全力フルスイングで打ち砕いてくれるようなとんでもない作品に仕上がっています。妄想戦士という呼び名はともかく、みんなかつてはそうだった若かりし頃の忘れたい殺したい殴りつけたい自分を見せつけられるような流れ。そんな妄想戦士を卒業した一郎と、現役ばりばりの良子をはじめとしたクラスメイトの半数という最大勢力が一般常識に縛られた「普通」と戦うお話。うん、たぶん嘘は言ってない。
まぁ、それはともかく、面白い。ロミオらしいというか、終盤の流れとかは痛さを突破して本当に気持ちいい流れ。こういう作風だよねロミオって。衰退で知った人には結構意外な展開かも知れないけど、こんな心を抉りつつも、最後にはなんだか救ってくれるような話も書く人なのですね。
氏らしい仕掛けもいろいろ感じられて、そもそも良子の設定が完全に妄想なのかあるいは、みたいな、物語の根幹的な部分にまでいろいろな解釈の余地が残されていたりと。あるいは、この作品の続編が出てきたりしたら、思いっきり学園異能になる可能性もゼロじゃないんだなあ、みたいな穿った見方もできなくなかったり。
っていうか、そこまで裏を読まなくても、この痛さと、そこから生まれる物語はラノベ読みとかには結構クリティカルに効いてくるんじゃないですかね。エピローグのむやみやたらな大団円さに苦笑いしつつも、気持ちよく読み終えられてしまったあたり、やっぱり、これは凄い作品ではないかと。まぁ、ほら、昔ノートにいろいろ書いた記憶のある人、騙されたと思って読んでみるが良いさ!
hReview by ゆーいち , 2008/07/26
- AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫 た 1-4)
- mebae
- 小学館 2008-07-19
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