暗く、深い、夜の泉

stars 罪を償うって、自分のしてしまったことに責任を持つことだと思う。

事故で父親を亡くした左記子は、父の知人・倉宮創一郎が理事長を務めるという、谷津柱高校へ転校することになる。彼女を迎えたのは理事長の娘であるという凪。彼女に学校を案内されるうちに、左記子は奇妙な規則を知らされる。外界との連絡を厳しく絶ち、そして、学校で噂される怪談を口にしてはならない、そんな奇妙な規則。しかし、左記子は望むと望まざるとに関わらず、その怪談の核心に近づいていく。伝えられるタタリ姫伝承、その真実を知ったとき、左記子は……。

……後味悪いな、これ。

閉鎖的な高校へ転入した左記子が巻き込まれる、不可思議な事件の顛末。タタリ姫という大昔の超常の力を有した巫女の伝説が、形を変えて蘇ってくるようなホラー風味の物語。

いや、てっきり、納得のいくラストが用意されているのかと思ったら、唖然呆然な結末で、これをどう受け取ればいいのやら。左記子と凪の境遇の相似と、生き方の違いが最後までふたりを救うことがなかったんだなあ。

ただ、左記子自身が事件に深入りしすぎたということが、この結末に繋がっているように思えてしまうのが微妙といえば微妙かなあ。助けようとしたひとたちの苦労も空回ってるし、この辺の救いのなさが受け入れられるかどうか。

この先に待ち受けてる本当の結末自体も、凪が救われるかどうかは微妙だし、彼女が感じている罪の重さは、もはや彼女自身をいつ押しつぶしてもおかしくない状況。結局のところ、罪を自覚しようと、購おうと思おうと、それ自体が逃避に見えてしまってる状況から、救いがもたらされるとは思えないお話。ああ、本当、救われない話でしたね。

hReview by ゆーいち , 2008/07/30