under 2―異界イニシエイション

2008年9月26日

stars 怖いことは弱さかもしれない。でも、怖いのを知ることは強さだよ。

エレベータの乗客が次々と行方不明となる事件の調査を行う唯人。異界使いとして、異界と向き合う覚悟を決めたはずの唯人だが、その目的と理由を見失いかけていた。守りたいのに、距離を詰めることを拒絶する灯香。薄れることのない異界への恐怖。そして、異界使いたちが次々と殺害される事件との関連が明らかなる中で、その背後で蠢く『グリムザール』が、全てを飲み込むための儀式を成就させようとしていた。

前巻の恥ずかしいような厨二病臭さが良い感じに抜けてきてるのかな。異界使いたちの戦いよりも、それと関わったことによる唯人の葛藤とかが表に出てきているせいかも。

しかし、ヒロインのはずの灯香の出番が少ない少ない。どちらかというと、一心同体な姉・蘭不が今回も活躍してくれたので、そっちの方で割を食ってるんだろうなあ。まぁ、唯人と灯香が仲良くなれど、恋愛関係になったら地獄を見せるとか言ってる姉だから、肝心なところで邪魔をするのは確実。まぁ、今回語られた、蘭不と灯香の悲惨な過去があるからこその、過剰なまでの愛情なんでしょう。少しずつ唯人も認められ始めているけれど、まだまだ先は長そう。

で、肝心の主人公・唯人は、灯香に振り回されてるのかなあ。自分の決意が揺れている中で、守ってほしくなんてない、などと言われたら反駁もしたくなるだろうけれど。そんな弱い自我が、どうやって叱咤され、立ち直ることができたのかというのがもう一つの柱で。唯人が手に入れた、異界使いとしての戦う理由は、この年代相応の、ちっぽけだけれど、だからこそ等身大の願いというのが良いですね。大義名分をかざしても、この世界では周りの大人達から全否定されそうだし。これくらいのわがままな理由だからこそ、自分が自分として戦っていけるのかなと。

物語自体は、『グリムザール』との対決が大きな目標となっている感じ。敵方の組織自体もそれほど大規模なものではなさそうなので、総力戦で決着となるのかな。深淵に至りたいというその望みのためだけに、道を外れていく彼らと、道を外れつつも人であることにこだわろうとする唯人たちとの対決が、迫っているのでしょうか。

hReview by ゆーいち , 2008/09/16

under 2

under 2 (2) (電撃文庫 せ 2-2)
瀬那 和章
アスキー・メディアワークス 2008-09-10