迷い猫オーバーラン!―拾ってなんていってないんだからね!!

2013年4月18日

stars 迷惑は、かけてもいいんだ。家族には。そして、友達にも。

都築巧の姉・乙女がまた面倒事に首を突っ込んだ。そんなことばかりしているから、経営する洋菓子店『ストレイキャッツ』が危機的な状況にあるというのに。幼なじみで凶悪な口の悪さと全く素直じゃない性格の芹沢文乃も、ぼやきながらも手伝いをしてくれるけれど、今度ばかりはどうなるか分からない。だって、今回、乙女が拾ってきたのは、捨て猫どころじゃない、謎の少女だったんだから!

世間では実名でニュースサイトが登場するとか、そんな理由であちこちで取り上げられてますが、そんな大騒ぎするようなことかと思ってしまうひねくれた見方をしてしまいます。別にそこが物語に大きく関わってきてるわけでもないですし。まぁ、安易に実名で大手のサイトとコラボ(笑)すれば、話題作になってウハウハみたいなつもりで今後も続いてくるようだとウボァとなってしまいそうですが。

で、表紙と冒頭の展開で、文乃のツンデレを楽しむドタバタなラブコメかと思いきや、なんだか家族計画になっていた本作。読み終わってみたら悪くない感じでしたね。逆境にめげずに、身を寄せ合って、けれど、卑屈にならず明るく日常を送っている姿に和みます。

姉が拾ってきた少女・希の登場で、巧と文乃の関係が微妙に揺らいでくるあたりから本格的にお話が動き出します。文乃の性格が、どこまでも徹底した本音を言わない嘘つきなもので、だからこそ、長い付き合いの巧は、彼女の本音をよく分かって御してみせたり。

そんな「家族」の中に、拾われ放り込まれた希は、言葉少なで心をなかなか明かそうとしないけれど、少しずつなじんでいく過程が良い感じ。学校へ行ったり、ストレイキャッツの手伝いをしてみたり、友人たちと言葉を交わしてみたり、と彼女がどんどんと巧の日常になじんでいって離れがたくなったときに起きる最後の事件。巧や文乃の抱えていた事情というのは、容易に想像ができるたんですが、だからこそ自分たちの気持ちでもって希とともにいたいと伝えるふたりの姿が響きますね。大変良いクライマックスでございました。

文乃は言うに及ばず、学校の友人たちや、お嬢な千世もテンション高くて極端な性格で描かれているので、このノリでどんどん続いていくとちょっと辛いような気もしますが、物語の方向的に、今回の終わり方のような暖かな展開を予定しているのなら、とても楽しみになってしまいます。そうなってほしいなあ。

しかし、主人公に想いを寄せる娘たちはみんな天の邪鬼で見ていて楽しいです。にやにや。文乃の言葉がどこまでホントでどこまでが嘘か、今回のラストの台詞を思うと、こういう娘も可愛いって思えてしまいますね。

hReview by ゆーいち , 2008/11/05