繭の少女と街の防人

stars 俺たちは今、境界を越えて古い理の中にいるんだ。

街の中に存在する、目に見えない「境界」。こちら側とあちら側を隔てるそれは、ときとして迷いを持つ人間を誘い込み姿を消させる。境界を見張る防人としての役目を持つ少年・諏訪守は、美貌を持ちながらも粗野な性格の少女・桜野ミチルから持ちかけられる境界絡みの事件を、解決していく。

なんだか古式ゆかしい雰囲気を持つ作品。悪くいうと、全体的に古くさい感じを受けてしまう、といったところでしょうか。

全体的に説明不足で、守が持つ街の防人としての役割や能力がよく分からないまま話が進んでいって、やや置いてけぼり感を覚えてしまいます。

そして、続刊が前提の構成になっているので、タイトルにもなっている「繭の少女」の紹介がほとんどないまま、この巻が終わってるあたり、消化不良じゃないのかなあと思ってしまいます。

最後のエピソードで、彼女(と彼女に属するものたち)と防人との間の因縁めいたものは感じられましたが、それよりも、そのエピソードで描かれた、境界に関わってしまったひとたちの悲劇的な結末の方がインパクトがあったり、というか、後味悪い終わり方でぐんにょりですね。

あとは守がどうにも冷め切って、さらにはその能力が万能くさいのがなあ。ピンチらしいピンチがなくて、淡々と事件を収束させたり。その辺が盛り上がりが感じられなかった一端なのかもしれません。

hReview by ゆーいち , 2008/11/15

繭の少女と街の防人

繭の少女と街の防人 (電撃文庫 く 1-9)
栗府 二郎
アスキー・メディアワークス 2008-11-10