過ちは繰り返される……昔も今も……未来もそうかもね。
特異遺伝子保持生物──通称“
おすすめされた9巻までまとめ買いしてたのですが、あれよあれよという間に最終巻 + 短編集まで発売されてしまいました。てなわけで、一気に崩すべく読んでおります。
面白いですね。まだまだ全体の物語としては序盤も良いところだというのに、とても盛り上がっている感じ。この1冊だけでもきれいにまとまっているのに、まだまだ先があるんだぜ?
そして、怪に対してどうしようもないくらいに敵対心を持つ太一朗と、そんな彼の感情をどこ吹く風と飄々といなす優樹の関係の変化が興味深いですね。人間と怪という相容れない存在の、境界に立つ優樹という存在。その事実を知ったから太一朗が態度を変えたわけではなく、彼女の為人に触れたからこそ、認識を改めていけたわけで、無駄に使命感に燃え、怪に対して排斥的な言動をしていた彼に初めてできた友人であり、それは優樹にとっても同じだったのかなと。
優樹にとって因縁のある殺人鬼・高橋が登場してから、物語は一気に陰惨な雰囲気になっていきましたね。周囲に受け入れられたか受け入れられなかったかで、全く歩む道を異にしてしまった優樹と高橋。彼女は彼を哀れみ、彼は彼女を憎しみ、そして迎えた3年越しの決着はなんとも苦みのあるもので、そして、その後訪れたさらなる転換で絶望の度合いは増していって。
人間は怪を恐れ、けれど、逆に何もかもを貪欲に利用しようとする醜悪さをも備えている。そんなことを苦渋の決断をした優樹の口から語らせるという仕打ちもさることながら、そこでもたらされた結末こそが優樹と太一朗の関係に大きな楔を打ち込んだように思います。
エピローグはひとまずのハッピーエンドぽい感じで気持ち良い終わり方なのですが、そこへ至るまでに黒幕の会話とか挿入されて先行き不安な雰囲気ですね。もともと、危うい感じを抱く物語だったので、この先どんな波乱が待ち受けているのやら、気になるわ期待できるわで先が楽しみです。
hReview by ゆーいち , 2008/11/22
- ダブルブリッド (電撃文庫)
- 中村 恵里加
- メディアワークス 2000-02
コメント