自分を縛るものはない、いつだって好きなように生きていける……そんな『いつだって』に『いつ』なんて永遠に来やしないよ。
シリーズ初の短編集。人知れず世界の平和を守り続ける星弓一家の日常は、普通から見たら非日常。今日も今日とて、ダイエットのために悪党退治を目指してみたり、異星の王子様(?)とゲームで対戦してみたり、挙げ句の果てには邪神復活を阻止してみたり、とどれもこれもが一筋縄では行かないようで……。
悪党退治は何カロリー?
暴飲暴食で体重が絶望的なまでに増加してしまった美智乃が、ダイエットのために選んだ運動は正義の味方として悪党を退治すること、っておい!
その発想がトンデモですが、軋人のシスコンぶりもたいしたものですな。いるかいないか分からない、美智乃の恋のお相手にやきもきしてみたり、ピンチに颯爽と登場してみせたり、と軋人にとって頭の上がらない姉たちとは違って、自分が守らなければならないという妹である、そんな気持ちが感じられたりします。過去の懐かしい回想とかも、この兄妹の仲の良さが如実に表れていますよねえ。
星の王子さま
割とほのぼの。そのくせ、いつの間にか地球規模の危機に巻き込まれていたり、ホント、この一家の周囲には波乱が絶えない、そんなお話。
柚島さんの面倒見の良さと、軋人との夫婦漫才が楽しめたりしますが、彼女なかなかデレませんねえ……。
刃の行方
本編の雰囲気に一番近かった短編かな。
過去にぶちのめした小悪党の鉄砲玉として、軋人を狙ってきた少年には、どうしてもそれを果たさなければいけない理由があって……。
かつての自分と少年の立場をだぶらせて仏心を出してしまったことで迎えるピンチ。割と容赦ない流れでしたが、オチ自体はこの作品らしい気持ち良いもの。自分と同じような後悔をさせたくない一心で、そこまでやれてしまう軋人の主人公属性全開なお話でしたね。
そして、やっぱり柚島さんの尻に敷かれまくりの主人公。こりゃ、進展しないよなあ……。
大邪神の夜
彩美&七美コンビがかつての母校を舞台に邪神退治。なんかスケールでかいんですが、彼女たちにとってみては、邪神だろうがなんのその。それよりも、その背後に隠されていた、とある人物の思いの行方に重きが置かれた、また、これも本シリーズらしいお話でした。
本編は軋人を中心とした語られが多いため、こういう姉同士の会話というのはなかなか新鮮。そして、彩美がしっかり竜助との仲を進展させていたり、そんなところを七美にちゃかされたりするシーンににやにや。
親父や母親、影の薄い弟と、今回あまり出番のなかったキャラもいますが、短編集らしくお気楽に、今までとまた違った姿が見られたりした一冊でしたね。
hReview by ゆーいち , 2008/12/10
- 世界平和は一家団欒のあとに〈6〉星弓さんちの非日常 (電撃文庫)
- 橋本 和也
- アスキーメディアワークス 2008-12-05
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[現代異能バトル][ラノベ]世界平和は一家団欒のあとに 6 星弓さんちの非日常
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