プシュケの涙

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stars 絵は枯れないもの。それで、あなたが少しでも喜んでくれたら、嬉しい。

夏休み、一人の少女が飛び降り、自殺した。それを目撃した榎戸川は、変人と名高い他クラスの由良から、彼女の自殺の真相を探るための協力を求められる。果たしてそれは自殺なのか、それとも? ふたりが辿り着いた真実とは……。

[tegaki]ああああ……。[/tegaki]

これはきついです。そして、それ以上に何かが心を打ち据える。柴村仁を見限らなくて良かったと、そんな思いを抱かせるくらいに、これまでの作品とは毛色も読後感も圧倒的に違った物語でした。

けれど、それでもこの作品は柴村仁の手によるものであると感じます。『我が家のお稲荷さま。』で描かれたような優しい空気が、この作品にも、ごくごく短い、まぼろしのような時間ではありますが、確かに存在し、そしてそんな柔らかさ、暖かさ、ほんの少しの幸福があったからこそ、容赦なく読む側の心をえぐり取るような作品に仕上がっています。

決してハッピーエンドではない結末。けれど、そこに至るまでにあった、彼と彼女の関係と想いの交わりを思うと、この物語はそれでも不幸一色で塗り固められた物語ではないのではないかと思えてしまいます。もちろん、彼は残され、彼女は逝って、そして、それに関わった「僕」らは、自ら取った思慮のない行動に見合うだけの代償を支払わされています。

そんな後味の悪い幕を迎えるこの物語ですが、だからといってふたりの築いてきた時間がなかったことになるわけでもなく、それゆえに、後半の物語がどうしようもなく愛おしくて、最後の彼女の言葉が深く深く心に響くのでしょうか。

読了後に作品の挿絵を見てみると、いろいろな感情がわき上がりますね。表紙のイラストはラノベ向きでは決してないですが、描かれたふたりの、繋がれた手、その意味を考えるとこの絵以外には考えられなくなってしまいますね。

優しい結末の物語ではありません。けれど、この作品には、言葉にできなかった想い、絵に託された想い、空を目指す蝶の翅の色彩と花束と、たくさんの優しさが込められています。

hReview by ゆーいち , 2009/01/18

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プシュケの涙 (電撃文庫)
柴村 仁
アスキーメディアワークス 2009-01-07
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