銀世界と風の少女

stars 変わらないね……泣き虫ソレイユ。

果てなく広がる銀色の砂漠・粋銀砂漠。凶暴な生物がうごめき、無数の地雷が埋まる死の大地。そこを行き交う交易キャラバンを護衛する任を負うマタドールと呼ばれる者たちがいる。そのひとりであるソレイユは、砂漠で幼なじみの少女で同業でもあるイブが行方不明になったことを知り捜索へ向かう。

終始微妙な感じで展開していったと思ったら、最後の最後いい話で終わってしまった感じ。う~ん、別に悪くないんだけれど、主人公であるはずのソレイユの見せ場があんまりなかったのがもったいないかな。

彼女の登場時の印象と、その後の印象がすごいかけ離れてるし。いきなり巨大な蟹を殴り飛ばすわ、モノローグではなんだかストイックな口調だったのに、実際は引っ込み思案でビクビクしてる気弱な性格だったりと、見事に正反対。行方知れずになったイブを捜すために、仲間と別れ単身捜索隊に潜り込んだりして、そういう流れになるかなと思ったら、さらに大きな事件の前座だったりと、盛り上げようという雰囲気は感じられるんですが、やはり登場人物が多すぎるかな。

ソレイユの所属するセルバンテス団の面々が、それこそ1冊使って語ろうと思えば語れるくらいの背景を持っていながら、そういった部分を割と駆け足で語ってしまっているのでどの部分をメインに語りたいのかが曖昧になってる印象でした。見事なくらいに、男女ペアでの過去からの結びつきがあるから、恋愛要素も絡めてしっかりと描けばいいのになあと思ってしまいますね。単巻でとにかく詰め込もうとしてしまったせいなのかは分かりませんがもったいないですね。

ソレイユ自身についても、彼女の生い立ちや、イブとの友情――ここは親友以上の感情がお互いにあるような気がしてにやけますが――、そしてセルバンテスとの関係と、これでもかといろいろと語るべき部分があるはずなんですが、エピローグではきれいにまとまりつつも、もうちょっとじっくりと描いてほしかった部分でしたね。特にセルバンテスとの繋がりについては、結局ほのめかしのままだったので、せめてそこは決着を付けてくれても良かったかなと欲を出してしまいます。

hReview by ゆーいち , 2009/01/25