フィクションでこんな悲しいことばかり起こしちゃダメなの。すべてのフィクションはエンターテイメントでなければならないんだから! 人を憂鬱にばかりして、そんな話に何の意味があるっていうの?
私立御伽坂学園で起きる奇妙な事件。『彼ら』と呼ばれる謎の存在が引き起こす事件を追いかける『当局』所属の足利アキラは見事にそんな事件に巻き込まれていく。幼なじみで学園の十哲に数えられる山崎章夫は、アキラと共に事件に関わり、そして決まってその最後に命を落とす。『彼ら』の陰謀通りに次々と起こる事件、同じ末路を迎える章夫の運命、アキラはその結末を変えるために『彼ら』へ挑んでいく。
『~・ビター・マイ・スウィート』シリーズとは随分と雰囲気変えてきましたね。トンデモな学園のトンデモな学生たちが、トンデモな事件に巻き込まれていくお話。
物語を引っ張る主人公・アキラが、そんな奇人変人たちとともに、『彼ら』と呼ばれる存在が起こす、超常現象を解決していくと、その先には意外な事実が潜んでいてという、構成としては分かりやすいループものの形を取っていますね。
キャラクターが随分と大勢出てきますが、中心にいる連中はそんなに多くないので、主要なメンバーを抑えておけばだいたいの流れは把握できました。が、これだけ大層な肩書きの連中を揃えてきたってことは、今後の展開があるならば、イマイチ影の薄かった彼らにもスポットが当たるときが来るのかもしれませんね。
今回は、アキラと彼女の腐れ縁な章夫が中心に、ふたりの運命をなんとか変えていくという方向で流れていきましたが、正体が割れてしまった『彼ら』による事件はこれからは使えなさそう。別の手段でまたおかしなお話を紡いでいくのでしょうかね?
序盤の展開というか、もう設定自体がかなり無茶で、読者おいてけぼりで話を進めてるような感じがしました。なんだか気持ち悪いと思いつつも、読み進めていくと、普通の結末に至って、これまた妙な気分に。慣れてきたのか、最初に一番変な話を持ってきたのかちょっと判断付かないんですが、この奇抜な物語を印象づけるという意味では、最初のエピソードのワケの分からない流れは、効果的だったのかもしれません。そんな感じで、珍妙な物語ではありますが、結末は爽やかという、なんともおかしなお話でした。
hReview by ゆーいち , 2009/02/11
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