じゃあ始めるぜ。長い夜だったけど、最後に無礼講だ!
真夜中に出没し、超低金利で高額融資をする<090金融>ヴァンパイア・ファイナンスを営む万城小夜。彼女のお眼鏡に適った債務者たちは、破格の融資を受ける代わりに、彼ら自身が抱える問題にまで首を突っ込まれ引っかき回されることに。欲望に突き動かされるまま金を手にする彼らが織りなす狂乱の一夜の幕が上がる。
いろいろな理由でまっとうな金貸しから金を借りられなくなった債務者たちが、超低金利なヤミ金・ヴァンパイア・ファイナンスを営む万城小夜の融資を受け、それぞれの目的を果たすために立ち回る、そんなお話。妙に生々しい感じがするのは、やっぱり現代を舞台にして、割と身近な違法な金貸しを題材にしてたりするのからかも?
小夜の生贄融資先となる四者四様の事情に、彼女が首を突っ込んできて、それが一夜にしてクライマックスを迎えるものだから、たたみかけるような展開はスピーディ。それまでの仕込みの部分が割と独立して動いていただけに、逆に無理矢理こういう構成にねじ込んでしまったがゆえの展開にも思えますが、時間に追われる彼らの物語が収束して行く様はなかなかに爽快でしたね。
まぁ、逆に事件が終わった後の最後のエピソードが微妙に思えるわけですが。ミステリアスな存在だった万城小夜という吸血鬼に人間としての実体を与えてしまう種明かしは、別になくても良かったんじゃないのかなあ。あるいは、このエピソードがなければ、また彼女を中心にして、この物語を続けることもできたように思います。こういう形で、彼女を怪物から人間に成り果てさせたというのは、作者がこの物語に止めを刺したのかなあなんて印象も浮かびますね。
あくまで主人公が小夜であり、彼女の都合に巻き込まれてしまった債務者たちの狂騒劇。だからこその、こんな短編連作みたいなお話だったのかなあ。
hReview by ゆーいち , 2009/02/21
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