ウェスタディアの双星〈4〉うら若き女王騒乱に立つの章

stars 求めるだけでは、人は何も与えてはくれぬものなのです。声を出さねば、まわりに声は届きませぬ。みずから動かなければ、誰も気づいてはくれんのです。

ルフェールの庇護の元、平和への道を歩み出したウェスタディア王国の女王・ルシリアは、ジェルトルーデ領への巡幸に出立する。しかし、順調かに見えたルシリアの巡幸は、ジェルトルーデ領に現れた王子・コルネリオによって暗雲立ちこめるものとなる。正当なる王位を主張するコルネリオに呼応して、現体制下に不満を抱く諸侯らが挙兵して、ルシリアらは人質に取られてしまう。王国軍との激突により内戦状態となるジェルトルーデ領宙域に、ルシリアの声は届くのか。

まさに獅子身中の虫。対外的な危機が去ったかと思えば、今度は身内による叛乱と、まだまだ平和への道は険しいようなウェスタディア王国。

それでも、これまではお飾りで、御輿に乗せられていた感のあるルシリアの、初めてともいえるような成果は、この混乱に陥った対立した国内軍を一つにまとめるという、他の誰でもできないような大きな成果でしたね。

ジェルトルーデ領への巡幸で、お忍びの外出に浮かれるような年相応な少女らしさを見せつつも、国を治める王としての自覚が、だんだんと彼女を成長させていってるようですね。彼女のそばで、彼女を支え続けるチェザーリとの関係も、彼が気づかないだけで、ルシリアの気持ちはどんどん惹かれていってるようで、彼がアルファーニに言ったような方法以外でも、チェザーリがルシリアを今後も見守っていく方法があるということに、そろそろ誰かが気づきそうなものですが。その辺は政略の部分もあるから、彼女がそういう道具として扱われそうになったときに、ふたりがどのような判断を下すのか、というそんなシーンもあるかもしれませんね。

一方の、対立し続ける超大国の帝国の動きは、どんどんときな臭くなっていってますね。ルシリアが民の信に依って立つ王ならば、帝国で頂点を目指すオリアスは、その野心と実力によって全てを統べるという対極的な存在ですね。ウェスタディア内の動乱はなんとなく予定調和的に終結したような印象ですが、オリアスがこれから赴く戦場もまた、彼の確信通りに終結しそう。当面の敵、というよりも、最終的な脅威となりそうな彼の侵攻を、どうやって凌ぐかが、これから大きな問題となりそうですね。

hReview by ゆーいち , 2009/02/22