それで良いんです。陳腐な言葉で構わないんです。貴女にそれが伝わるのなら。
前巻から思いっきり続いていて、そしてシリーズ完結。僕と志乃ちゃんの再会とともに起きた事件の真相解明と、最後の事件。
失われてしまったもの、もう戻らないもの、別たれてしまったもの、そして得ることができたもの。事件に巻き込まれ、様々な人間の姿を見せつけられ、その中で僕たちが辿り着く答えは、お互いに握りあった手のひらの温もり。
人間は根源ではどうしようもなく孤独で、他者と交わることなどできなくて、最初から最後まで独りで生きていくことしかできない。そんな風に悟ってしまっていた志乃ちゃんに、そんなことはないと心で思い、願い、伝えようと努力し続けてきた僕。今回の事件は、いろいろなものを失いながらも、決して失くしたくないもの、ずっと寄り添っていきたいものとしての互いを確信するに至るための、なんとも遠回りな告白めいたお話でしたね。
笑顔など見せることのなかった彼女が、僕との生活を通して未来で得ることができたもの。合理的でもなんでもないけれど、それはたった一人で在り続けたままでは手に入らなかった誰かとの絆の形でしょうか。それを描いてくれる最後の挿絵と、読了後に見る表紙絵はなんとも感慨深いものです。
hReview by ゆーいち , 2009/03/22
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