されど罪人は竜と踊る〈5〉~Hard Days & Nights~

stars さあ、次の意地悪をしにいくよ。退屈な人々が作る退屈な世界を、楽しい世界に作りかえよう。楽しい悪戯をしにいこう。

見覚えのある短編集に書き下ろしを加えた新説短編集。『災厄の日々』のガガガ文庫版ですね。

黒ジヴの初降臨となる『禁じられた数字』は異色ながらも読んでて楽しい。当人たちはそれこそ命がけのゲームですが、真剣にゲームですべてをかけて望むとかどんだけデンジャラスな関係なんだお前らは。

それ以外のは書き下ろしの『幸運と不運と』を除けば、され竜らしい後味の悪い物語で、このエピソードを挟んで、次の長編に続いてくのだろうなと思うような伏線がちらほらと見え隠れしてますね。所々で顔を見せる、ガユスやギギナにちょっかいをかけてくるザッハドの使徒と、モルディーンがしかけてくる悪戯が良い感じに混じり合って、またしてもふたりはとんでもない事件に巻き込まれていきそうな雰囲気ですね。

で、もう一編の書き下ろし『刃の宿業』は、これ全編バトル描写溢れるギギナを中心にしたお話。ドラッケンの戦士としての彼の生き方、戦い方と、相容れずにそれでも相棒を続けるガユス。強さを求めるために師事した男との命の取り合いや、さらにはそれさえもさらに大きな陰謀によって手駒にされてしまう救いのなさと、短編ながらもされ竜エッセンスに満ちた作品でしたね。

ガユスを中心に物語を描いてきたこれまでのシリーズとはちょっと方向を変えてきてるのかな。逆にガユスの過去がまだはっきりと語られてないし、ジオルグ呪式士事務所時代のエピソードなども残されていることを考えると、そういった過去のエピソードを上手いこと長編の間に挟むことで、物語とキャラクターにさらなる深みを加えようとしているのでしょうか。

次巻も短編集ぽいですが、その次はいよいよ新長編ですね。文庫未収録の短編なども早めに陽の目を見ることを期待したいです。

hReview by ゆーいち , 2009/04/04

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されど罪人は竜と踊る 5 (ガガガ文庫)
浅井 ラボ
小学館 2009-02-19
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