俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈3〉

stars ……妹って、そういうものでしょう? ……こればかりはどうしようもないわ。手間がかかるわりに何の見返りもくれなくて――気まぐれな猫を飼っているようなものだもの。

次なる桐乃の人生相談はケータイ小説にまつわるものだった。何の偶然か桐乃が書いた理解不能なケータイ小説が出版を持ちかけられたのだという。それにまたしても強引に協力させられた俺はよりにもよってクリスマスに渋谷の街に繰り出すことに……。

ぐはぁ!? なんかいろいろと痛いよ!!

と、少しでも小説っぽいものを書いたことのあるひとにはクリティカルな内容が後半語られるわけですが、それはそれとして、今回は前巻よりも笑い所が多かったような気がします。さくさく読めて所々で吹き出したりと、ああ、これは割と身近な話題をネタにしてるからなんだろうなあ。

そんな中での一服の清涼剤。幼なじみな麻奈実とのまったりとした日常は、京介の癒し空間。ぶっちゃけこのルートが正道な気がしてならないのですが、なんだかんだずるずる腐れ縁で付き合いが続いてそのままゴールイン、な感じで一つ。てか、だれもふたりの恋路を邪魔しようとしてない――桐乃以外は――からまっとうな人生を歩むならそういう流れで良いんじゃないのかなあ。

で、それ以外の章については、桐乃が創作の道に足を踏み入れあるいは踏み外してなエピソード。もうさ、冒頭から痛々しい話題で苦笑いが止まりません、この辺はリアルに体験していた世代だったりするだけに直視できないわけで(笑) てか、ラノベ上で「U-1」とか「スパシン」とか良くもまあそのまま掲載する気になったものだなあ、と。関係ないけど、検索してうちのサイトがトップにこなくて良かった~5番目にきてたけどorz いや、ホントにアレと関係ないんですよ? たまにそれっぽい検索で来る人がいるけどさあ!

で、某文庫編集部に乗り込んでのやりとりは、もう、物語の本筋よりも、業界に絡むあれやこれやとか、編集者の言葉とかがグサグサ来るわけで。ラノベレーベルへ精力的に応募してるひととかは、ある意味針のむしろ的な文章を延々と読まされたんじゃないかと……。いや、あの言われ方はヘコむね! 文章で読んでも他人がヘコむくらいだから、直接言われたら泣くさ、泣くとも! その辺はアキバブログのコラムを副読資料として目を通すのが良い感じですね。みんなぶっちゃけすぎです。

まぁ、ともあれ、桐乃はともかく、彼女の周囲の彼女の友人たちはクセはありながらも本当に気の良い連中ですね。今回矢面に立ってくれた黒猫も、なんだかんだと反駁しあいながらも友人のために動くくらいの優しさを見せるし、自分の報われない嫉妬の気持ちを切り離して創作者として友人のために言葉をぶつけられる強さは気持ちの良いものでしたね。てか今回の最後の章は黒猫のエピソードと見ても素晴らしかったなあ。豹変後のクールな妹モードで「兄さん」くはぁ、たまらん!! 邪気眼だ厨二だといわれながらも根っこの部分は良い娘だよなあ……。いろいろヘコむこともあるけど今後も我が道を行くが良いさ。

そんな感じの第3巻。次は短編集だけれど、今回の引きで桐乃が告げた言葉の真意は果たしてなんなんでしょう? まぁ、デレることはないだろうけど、どんな難問珍問で京介を困らせることやら、楽しみです。

hReview by ゆーいち , 2009/04/12

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俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈3〉 (電撃文庫)
伏見 つかさ
アスキーメディアワークス 2009-04-10