私はあなたに強制しない。水無神操緒を救って、この世界とともに滅ぶか、それとも彼女を犠牲にして、“二巡目の世界”に戻るか。決めるのはきみよ、夏目智春。
“一巡目の世界”へ飛ばされてしまった智春は、元いた世界への帰還の方法も分からぬまま、このもう一つの世界でもうひとりの知人たちに出会う。姿の見えない操緒、様子がおかしい奏、そして滅び行く世界の姿を目の当たりにした智春は、何もできないままの自分に歯がみする。意外な人物によって告げられる世界崩壊の真実を知ったとき、智春は決断の時を迎える。
重い展開が続きます。崩壊を間近に控えた世界は、そこに暮らすひとびとの目には映ることなく、だからこそ静かに訪れる世界の終わりというものに言いようのない恐れを覚えます。
そんな世界で、確かに生きている智春の友人たち。滅ぶことが確定し、彼らを見捨てて“二巡目の世界”帰還することが、未来を作る方法だと信じていた彼に告げられる世界崩壊の原因と正体は、スケールが大きくてポカーンとなりますね。いや、ついにラスボスめいた「何か」の姿が明かされ、世界を救うための方法も見えてきたのですが、そう上手くいくとは思えないのがこのお話。
そして、窮地において残酷な選択を迫られ、それでも選ぶことのできない二択問題に、さらなる選択肢を増やしてくれた奏の献身と愛情は、あまりに痛々しくて。帰還後に彼女を救うなにがしかの方法が残されていることは語られていますが、操緒を救うのと同様、それはすべての問題に片が付かない限り簡単には叶えられそうもないですね。
新たな力を得、新たな決意と覚悟を持って自分の世界へと帰って行く智春。“一巡目の世界”を見捨てることなく、続く世界で最良の結果を出すことで、この世界さえも救おうと決めた智春の心は、彼だけでなく、彼を支え、導いて、踏み出す勇気を与えてくれた皆の力に満ちているように思います。
hReview by ゆーいち , 2009/04/12
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