禁忌の知識を書き記した幻書はこの世に在らざるべき存在だ。幻書を見守る読姫と、鍵守も。それら全てを焼き尽くすために焚書官は存在する。
いつになく荒れるダリアンの理由は、読み終えたばかりの流行小説の最終刊となるはずの第3巻が存在しないがゆえだった。作者の死亡により物語の結末を見ることは叶わない。しかし、そんなヒューイの元に、件の作者、レニー・レンツから助力を求める手紙が届いて……。そして、幻書にまつわる物語は、鍵守と読姫を焚書官へと巡り合わせる。
ダリアンがどんどんと幼年化していっているような!? いや、かわいいんですけどね。
今回はかなり軽いテイストのお話が含まれていたりして、重苦しい印象はどこかへ飛んでしまったかのような。いや、最初のエピソード「換魂の書」のお話とかは行き過ぎたファンの憧れの暴走とかミザリーさながらのホラーですが、業の行く先が割とお約束だったのでそんなに救いがないわけでもないのかなあとか。
他には「魔術師の娘」のオチに思い切り脱力したり。いや、こういう報われなさは、ある意味男としての落涙を禁じ得ないものが……。そうだよね……そういう展開だってあるよね。それまで必至に戦ってきた男たちの情熱の行き先はどこーー!?
そして、意味深な登場をしつつも前巻では存在を忘れられていたかのような扱いの焚書官がついにヒューイたちと遭遇。やたらとシリアスな過去を背負っていて並々ならぬ憎しみをふたりに向けてくる焚書官・ハルだけれど、その対決の行方はなんともはや。お互いの抱えている使命の方向性が見事に交わっていないせいかのあしらわれ方ですが、ここだけみると、どこか抜けた部分があるような愛嬌も感じてしまいますね。
雪辱に燃えるハルが再びヒューイたちに相まみえる日はやってくるのでしょうか? その時は問答無用な対決に発展しそうですが、はてさて……。
hReview by ゆーいち , 2009/05/09
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